投稿日: May 21, 2012 1:35:18 AM
自主出版にeBook利用の鍵があると思う方へ
私が給料をもらって生活していた時代に仕事で何冊か本を書いたことがあるが、それらはあらかじめ販売部数が読めるものとか、何らかの出さねばならぬ理由があって、たとえ実売1000部以下でも承知で出版するものだった。かつては20代の後半に作った実用書はその後20年以上も販売されたが、DTPになって以降は3年くらいしかその種の実用書の寿命はなくなった。技術書は教科書的なものや、アーカイブ的なものが多くなって、当然それほど売れない。本を出す立場としては「こんな本があったらいいな」と思っても、果たしてどれだけ売れるだろうかというところで止まってしまった企画が山ほどあるはずだ。ここを半歩でも進められるようになると出版の活性化につながるだろう。
今の出版業界はリスクを背負うことができにくくなっているので、売れないかもしれない企画で執筆依頼はできないのだろうが、原稿料や印税がなくても著述する人は多くいるのだから、そういった方々が埋もれてしまいそうな出版を半歩進める推進力になれるのがeBookであろう。だが今の日本の電子書籍ビジネスではほとんど考慮されていないように思える。昔から商業出版社でも自費出版部門をもっていたところはいくらもあるのだから、そのブランドで電子書籍をするのが一番簡単に思える。著者側としても自分の名義で電子書店に出しても世間には判ってもらえないという不安があるだろうから、従来の出版ブランドに近いものが使えるサービスが望まれる。
しかし紙の本とは別の電子書籍ブランドをどう作るかというのは、出版社が考えあぐねているところではないだろうか。つまり従来のマスマーケティングではない方法で出版物を提供する販売方法は新たに考え出さなければならないからだ。今ある宣伝方法は売れ筋とかランキングによるものだが、それでは一部の書籍しか紹介できないので、ロングテール時代には詳細な内容分類の方が参考になる。それを作り出すことや作品を分類する方法がないのかもしれない。
アップルがコンテンツ審査をしている理由は何だろうかと考えていた時に、ひょっとすると不適切な内容をスクリーニングするための全文検索の際に、作品の内容の類似や他の作品との相関とか分類用メタデータなどについて自然言語処理して、日本の大阪が舞台で江戸時代で商人の姿が描かれている、とか判別いたらすごいなと思った。Appleはおそらくそうはなっていないと思うが、Googleならそういった研究はしているかもしれない。
今は詳細な内容分類がすでに出来上がっている学術分野ならロングテールに向いた作品の紹介は容易ななずで、そういう実現可能な分野からeBook利用が広まるのが自然だろう。