投稿日: Jan 06, 2014 1:53:49 AM
世界の潮流は?
近年は今まで知らなかったものが突然登場するようなビックリなイノベーションというのはないが、ビジネスの潮流が確実に変化していることをいろいろな調査や統計から確信できるようになっている。2014年の予測を書いた記事もいくつか読んでいるのだが、やはり意外なことはもう書かれていない。ただ世界の予測と日本国内の予測にはやはりいろいろなズレがあることを感じる。日本の話題は日常的に耳に入ってくるので、ここでは世界の潮流というのを改めて整理してみた。繰り返しになるが、何も目新しいものではなく、ただ日本は違うとタカをくくっているとガラパゴスになって出口を失うことになるだろうから、世界に目を開いていたほうがよいのである。
ソーシャルメディア
大規模なメディアは世界の人口の相当数をカバーするようになって、かつてのどんなマスメディアよりも多くの利用者を抱える。しかしそこにマスメディア効果は期待できない。facebookやtwitter以外にもいろいろなソーシャルメディアが誕生して、それらがfacebookにも紐付けされる。それは個人の活動領域や趣味嗜好に基づいてセグメント化されていて、その共通の土台がfacebookやtwitterなどである。
ソーシャルメディアにコンテンツを出す場合に、「いいね」数を闇雲に増やすことよりも、個人の活動領域や趣味嗜好に刺さるかどうかが問題であって、万人向けPRはそれほど効果がないだろう。ソーシャルメディアを通じた広告や案内のコミュニケーションはターゲット像を明確にしておくことが第一である。
商品とターゲット像とコンテンツのマッチングは、従来は勘であったのが、そこにデータ処理がからんでくる。いずれにせよ競争力の問われるのはここである。(参考:オバマ勝利 記事『ビッグデータ礼賛が見落としていること』)
モバイルファースト
ソーシャルプラットフォームの拡大は、従来インターネットを使っていなかったITの裾野領域においてモバイルが普及したことでもたらされている。特に発展途上国においてはそうである。この数がPC利用者数と比べて大きいので、PCを捨ててモバイルシフトしても意味がない。二者択一ではなく、コミュニケーションやコンタクトの最初の段階をモバイルに設定することと、その後にモバイルとPCの使い分けがあるように組み替える必要がある。
日本のeJapanはPC上でも不十分なサービス状態であるのを、急にモバイルに乗せ変えることはできないだろう。役所の手続きをモバイルで完結できるようにしようと思うと、何十年も待たされるかもしれない。それよりは簡単な問い合わせで済むものをモバイルに集中し(当然PCでも見れて)、PCで複雑な手続きも簡単にできるように、両方を進める必要がある。
ビジネスでも今日明日に必要な情報と、過去のアーカイブも含めた総合情報は、モバイルとPCに区分してサービスしたほうがよいであろうし、モバイルの利便性を活かした「リ・デザイン」と、モバイル同様の簡便さで使えるWebが必要になるだろう。
技術導入
ARや3Dプリントのような見た目の部分の技術革新が話題になるが、ARで商品を認識させるとなると、その先のサービスのために商品に関するデータベースやコンテンツが十分に用意されている必要がある。3Dプリントなら3Dで設計するCADシステムを使いこなしていなければならない。ECなら調達や物流の向上にITが使われている必要がある。つまりメディア技術の背景としてもっとインフラ的なデジタル化が進んでいる必要がある。
その上で、CRMとかビッグデータとかをマーケティングの課題にすることは理がかなってはいるが、CRMとかビッグデータに手をつけたからといってバックヤードやインフラのIT化が促進されるわけではなく、技術導入の順序が逆にならないように気をつけるべきだ。
Amazonは物流管理に加えてSEOやリコメンドやカスタマレビューなどなど諸々の機能をもってECで成功してきたわけで、オンライン販売の機能だけで対抗しようというのは茶番である。もっとビジネスの基礎体力向上のために技術導入を真剣にすべきである。
広告
マスメディアはなくならないし、マスプロダクツはマスメディアが適している。しかしネットがマスメディアの機能を拡張することは幻想になりつつある。アメリカはネット上のバナー広告も堅調であったがピークは超えたとみられ、モバイルでソーシャルなメディアを使い、ターゲットを絞った広告・販促に向かう。したがってバナー広告で収益を得ようとするネットメディアにも限界が見えてくる。万人に押し付けのバナー広告よりも個人的にコンテンツ価値が感じられるものが利用者のクリックする広告になる。
同時に今後は広告の概念は変わらざるを得ないだろう。データ処理によるリコメンドと、人手によるアフィリエイトの区別もつきにくい。何が広告で何がコンテンツか、販促にかかったコストや価値、こういったものが揺れると、従来のような広告売上げの統計が意味をなさなくなるからだ。
イノベーター
近年かなり永くの間、ITのイノベーションの震源地はシリコンバレー界隈であった。アメリカ国内でもデータセンターはどこにあっても構わないし、テーマが通信インフラから顧客サービスに変わるとテクノロジー企業もシリコンバレーが特に優位なわけではない。たまたまGoogleやfacebookが大勢を雇用するようになったのでネット関係者が多いようにも見えるが人数とイノベーションは比例しない。
世界のネットのサービスにおいては今は利用者数のランキングでトップ10の半数くらいを中国の会社が占めるほどになってきた。中国がアメリカの市場に参入を狙っていた時もあったが、今は逆にアメリカの企業を買収することも増えている。それは中国でネットビジネスがもっと拡張する余地があるからである。
その先には中国が世界を相手にECをする日が来るかもしれない。(参考:レノボがDELLのようになったら 記事『ずり下がるネットビジネス』)