投稿日: Dec 04, 2012 1:25:53 AM
必ずしも紙が優位ではないと思う方へ
記事『デジタル化に対応できない企業』がdisruption(崩壊)する典型例がアメリカの新聞広告かもしれない。以前はTVと並ぶマスメディアの雄であった。TVの伸張にに負けずに新聞も2000年頃まで売り上げを伸ばしていたのである。日本ではリクルートが情報誌という分野を大きくしたが、アメリカにはそのようなものは無く、すべて新聞広告が吸収してしまったために、新聞は莫大な広告ページ数を処理していた。特に日曜版が特大で、日本のように自転車では配達できないほどのものであった。
日本でチラシに相当するものは、新聞紙面内の広告と、別の印刷物(多くはタブロイドとか小冊子のようなインサーツ)を新聞社内で折り込んで配達する。だからこれらすべてが新聞広告の売り上げになり、小売広告の中心であった。しかしインターネットの時代になって、新聞に集積していた情報は徐々にネットでの広告やサービスに変化してしていった。最初に「売ります/買います」というようなものがネットに移ったが、新聞広告はTVからもぎ取るくらいの勢いで売り上げを伸ばした。
しかし細かい広告だけでなく、全国広告もネットを重視するようになって、TV広告も新聞広告も減少が顕著になったのが21世紀である。その減り方というのは極端で、新聞広告の場合はこの10年で3分の1になり、老舗の新聞社でもつぶれてしまったところがいくつもある。これによって新聞の記事そのものもネットへの依存度を高めるようになってしまったのだと思う。アメリカの新聞は紙面に占める広告の割合が3分の2ほどだったので、広告金額が3分の1になってやっと日本の新聞くらいの比率になったのかもしれず、今見てもそれほど広告が少ない気はしない。
それよりもインサーツが減っているのではないだろうか。これはインサーツのクライアントの主体が量販店で、彼らがAmazonを始めネット通販に苦しめられているからだ。インターネットの初期にはネット通販は欲しいものを検索で探す目的買いであるといわれたものだが、1日のうちでネットに接する時間数が増えるにしたがって、アフィリエイトなどで発見買いすることが増えていった。毎日何千人が見るようなblogでは、そこを介して月間何百点かの商品が売れて、アルバイト収入になるようなことが増えた。
物販サイトの作り方も変わってきて、チラシ的な商品写真と商品説明を多数レイアウトしたものが発達して、ブラウズしながら特売を探すなど、サイトの滞在時間も長くできる楽しさが加わっている。かつて紙のチラシの特徴といわれたものの幾らかは画面上でも十分発揮できるようになっている。
広告主としては新聞の減少を黙って見ているわけにはいかないであろうから、新聞広告に代わる生活者へのアプローチ方法を何としてでもネット上で工夫する必要が出てきたということだろう。