投稿日: Jan 21, 2012 1:54:33 AM
SteveJobsの遺言が何かを考える方へ
円環状をしたApple宮殿の建設はどんなペースで進んでいるのかどうか知らないが、お金が続く限りはSteveJobsの残した青写真の上にAppleの経営はされるのだろう。つまりSteveJobsがこだわっていた事が反芻されて行く。なぜかJobsは教育に夢を持っていた。AppleIIの頃からパーソナルコンピュータのインパクトを教育に結び付けようとしていた。Lisa/MacにおいてはPascal言語を採用した。実際に市場として学校関係にはAppleの初期から随分浸透した。ハイパーカードもその延長にあった。つまりAppleは35年間も教育市場にラブコールを送っていたわけだ。
今回発表された iBooks Author は別に教科書に特化したような機能はまだ見せていなくて、カタログでも何でも固定レイアウト(リフローでないらしい)の紙面を模すデモをしている。またオーサリングが簡単にできる点も、ある意味では機能に制限を付けていて、万能ソフトを狙っているのではないらしい。Adobeの製品群との比較もされているが、Adobeにたどり着けない人が対象になるのだろう。しかし記事『Apple、iBooks Authorの行く手にあるもの』に書いたように、既存の出版プロセスを踏まえないことにはeBookでも出版はできないので、すでに経験を積んだ編集者がデザイナや印刷会社をヌキに出版できるようにするものだろう。でもそれだけでは教育ということとは直接結びつかない。
教育に関係しているのは iTunes U というアプリだ。大学の講義をポッドキャストで聞くiTunesUは以前からあるもので、新しい点は生徒と教師のコミュニケーションをサポートする機能である。教師はiTunes Uを通じてメッセージや課題を生徒に送信したり、講義要項を共有でき、iBooks 2と統合されていて、生徒は動画、文書、アプリケーション、教科書といった教材に簡単にアクセスできる。 iBooks Authorで作られたものはiBooks経由での配信なので、iBooksのDRMを経由することになろう。つまりフィルタリングされるわけである。iBooks 2、iBooks Author、iTunes Uの垂直統合の連携が教育という聖域を作り出すことになるのだろう。MacもiPadも設計の際に「このように使ってもらいたい」と考えたことを実現するには垂直統合的な利用環境を作る必要があったのだと思う。
一方これはビジネスやエンタメでは不可能なことである。ビジネス用途は企業の投資金額がまとまって入るので市場参入しやすいのだろうが、利用者のニーズに応えていかなければならないので、SteveJobsが掲げる利用像とは異なる結果になる恐れもあり、Jobsは一生懸命になれなかったのだろう。エンタメはiTuneでメジャーな音楽産業と連携ができた。その延長にテレビや広告のモデルが考えられ、それはそれで進めてはいるが、SmartTVや映像ダウンロードはまだ結果が出るまでには時間がかかるだろう。SteveJobs亡き後、Apple健在を印象付けるには、今iPadで教育市場にテコ入れをするのが妥当だろうし、そこで成果が出れば、テレビや広告市場にも大きな影響力を持てると考えているのではないか。