投稿日: Mar 20, 2012 11:52:29 PM
出版経営が変わらなければならないと思う方へ
春休みで子供の部屋を片付けたので、そこで発生した読み終えたコミックやラノベをBookoffへ持っていった。するとだいたい1冊60円で買い取ってもらえた。これは親の文庫本などがタダ同然であるのと比べると破格の高額で、大人の文化に対する価値観と、実際の社会での流通の価値のギャップをまざまざと感じさせられた。このことから考えられることは、大人向けの本よりもコミックやラノベの方がよっぽどビジネスとして全うな状態にあって、実際には若い人の本離れは言われるほどはなく、日常生活に根付いていているからこそ、適切なリユース(中古流通)もされているということだ。適切とは売れ筋と値段というものがちゃんとバランスするような情報の透明化がされていることでもある。
逆にいえば、大人の本は売れ筋と値段のバランスをとるようなメカニズムが出来上がっていないことでもあり、これは書店が自主的な仕入れをする必要がないから起こったことだろう。どちらも再販制度は利いているのだが、子供向けの方がマーケティングがしやすくなっているのが事実ではないか。だから大人向けも販売に関する情報が透明化すれば、マーケティングがしやすくなって、販売店が積極的に何を仕入れたらよいかがわかるようになるはずだ。
本のマーケティングが行ない難い方向にあるのは、発行点数が倍増してしまったことが主要因で、販売実績が新刊の企画にあまり反映しなくなって、当てずっぽうで出版することが増えたからではないか。出版ビジネスのリスクのとり方は一通りではなく、大手出版社と専門書と自主出版の世界ではそれぞれ異なる。だからそれぞれにマーケティングの方法を考えなければならない。それはすでにPOSなどでいろんな販促からマーケティングへのフィードバックがされている例が多くあるので、それらを参考に出版界っも切磋琢磨をすべき時代にある。コンビニは雑誌の仕入れに関しては管理方法を持っているだろうし、TUTAYA も BookOff もそういうことはやっている。書店チェーンも何らかやっているだろう。それが一般化しないのは、取次ぎに依存しているところが未だに多いからであろう。
出版のビジネスを子供の本のように正常化するには、電子書籍のフォーマットがどうであるかとかいう議論よりも、日本の今までの出版ビジネスの問題点をITやネットの時代にどう解決するかという視点が必要である。ネットの時代だからすべての出版物のデジタル化すれば経営が何とかなるというわけにはいかないのである。黒船とか Kindleを考えるのに価格とか権利問題のような局部的なところだけを見ていては、出版ビジネスの変化全体が見えなくなってしまう。Amazon は何かと騒がれる割にはビジネスとしての実態はなかなか理解されていない。アメリカで育った Amazonの基盤がどのようなものなのか、Amazon という会社をどう理解するかを考えて、Amazon戦略のヒントを探るために、3月28日(水)にセミナー 出版を最先端ビジネスにしたAmazon を行なう。