投稿日: Dec 06, 2012 6:3:3 AM
戦略が不足していると思う方へ
2011年はSteveJobsが亡くなったこともあってJobs本がラッシュだったが、2012年は打って変わってJobsの元で働くのはゴメンだという意見も大手を振って出てきた。冷静に考えると、あのようなワンマン・カリスマ経営者は滅多に出ないので、とんでもない逸話が面白おかしく語られても、議論したり比較して有効な話に落ち着くことにならないだろう。私はSteveJobsがAppleという組織に何らかのカルチャーを根付かせたとは思い難いので、前途は多難だろう。例えばCompaqはHPブランドになってしまったけれども、いかにもアメリカ的な無骨で頑強そうな造りは引き継がれている。そういったモノ造りの特徴はAppleにはなく、やはりデザイン面の洗練がAppleの特徴であるが、それはITとはあまり関係の無い次元である。
Appleの成長はIT云々よりもマーケティングのうまさにあることを記事『カリスマの不在』で書いたが、ITであらたなライフスタイルを示そうという流れはApple以外にも多く受け継がれていて、むしろ今度はライフスタイルそのものがビジネスの場になろうとしている。電子書籍というのはKindleやタブレットのようなガジェットが話題になっている間は本物ではなく、作品そのものが大衆的に話題にならなければならないし、その作品を1日の中で何処でどう読むかという点で新しい状況が生まれたときに、電子書籍ならではの市場が生まれたとか動いたことになる。
ケータイコンテンツは電車の中で立ったままでも見ることができて、紙の漫画や本よりも観る機会を増やした。電子書籍では寝転んで分厚い本を読むと時々誤ってページを閉じてしまって戸惑うことがなくなった。きっと電子書籍は読書がかのうな時間帯を広げると考えられている。そんな時にどんなコンテンツがふさわしいかというのが、新ライフスタイルに合わせた本のマーケティングになる。
だから電子書籍の過渡的な段階では組版とかフォントとか、AppleかWinかAndroidかKindleか、という話はあっても、ビジネスの戦略としてはそれらがどれであっても関係ないのだし、むしろそれらがどうなっても変わらず重要なことを前倒しで取り組むのが事業責任者の努めである。現実には経営層が何か革新的なことをしたいと考えても、適切な担当者や責任者が社内に不在のことがある。つまり責任者の個人の知見の範囲で取り組まれたのでは長期的にビジネスの舵取りはし難いので、やはり戦略部分を経営者とともに考えるような責任者が欲しいのである。
日本の電子書籍への取り組みを見ていると、戦略的なことに関心をもっている方がかなり少ない気がする。もっとも経営者で何らかの強いコンセプトを持った人が少ないので、責任者の能力に振り回されてしまったという面もあると思うが…。