投稿日: Jun 17, 2014 12:45:15 AM
5月にKADOKAWA・DOWANGOという経営統合の発表があって、今まで角川会長がコンテンツ戦略を語りながらも自らがネット上のプラットフォームを持ってはいなかった点が解消され、新たな出版とかコンテンツ事業の戦略実現に向けての歩みが始まろうとしている。日本の出版革命の担い手としては最も順当なパートナーシップだと誰もが思うだろう。
両者のH25年3月期の経営をざっと比較すると次ようになる。
DOWANGO vs KADOKAWA
純資産 : 19,675 vs 69,708(百万円)
総資産 : 25,026 vs 106,976
売上高 : 19,178 vs 5,719
営業利益 : 542 vs 907
配当 : 2,000円 vs 45円
歴史の長い角川は資産でドワンゴの4倍強あるのは当然として、売上高ではドワンゴの方が3倍にもなっている。おそらくドワンゴは売り上げの天井感を感じていて、これからさらに伸ばすよりは経営の永続を考えるようになったと思われる。
従業員数では 1075人 vs 2795人 なので、ドワンゴの方が一人当たり利益率ははるかに高い。
年収を比べると 平均年齢31,6歳 581万円 vs 平均年齢44,3歳 1,015万円 となり、角川の方が7歳年上で収入が倍ほどあって、それでドワンゴの方が一人あたりの利益は1.5倍あるのだから、両者は組織としては結構なアンバランスである。
つまりコンテンツとプラットフォームを統合して、もっと多面的なメディアビジネスをする可能性は大きいものの、現在働いている人々を統合することにはいろいろな難題があることが予測される。出版界の中では最もモダンな経営になっているはずの角川ですら、こういった乗り越えるべき大きなギャップがあるのだから、なかなか角川のようには決断できない出版社がITネットメディアとパートナーシップを組んで仕事をするとなると、その困難さはいかほどのものだろうか?
実際問題としてパートナーシップが組めた例があまりないのは、これほどのギャップがあると、一緒に仕事をするうえで、相手の身になってモノを考えたり行動することができにくいからである。KADOKAWA・DOWANGOが新たに生み出す事業には当然関心があるが、対照的な文化を持つ2つの組織がどのように融合していくのかということの方が社会的なインパクトがあるかもしれない。