投稿日: Dec 26, 2012 1:19:5 AM
リコメンドは広告を滅ぼすと思う方へ
記事『ネットの問題はネットで解決』ではステマといわれるものも、従来の広告の感覚からすると自然に出てくるもので、ネットを現実社会と切り離して考えるからステマが問題にされるということを書いたが、ネットのように対面でない場合は、それが広告であるという「場の雰囲気」がないので、真に受ける人のことを考慮しなければならないということだろう。しかしステマに何らかのルールを作ったり利用者教育をしたところで、ネット上には次々と新しい広告が登場する。これの意味するところは2つあって第一はバナー広告なども信用されず、わざわざクリックしてまで広告を見る人がいないということである。第二はディスプレイという限られたスペースの中にはアナログ広告のようにビジュアルで強引に引き寄せるという手が取れず、テキストで工夫しなければならなくなったということだろう。
テキストによる広告の新手としては、「デマンドメディア」のように検索エンジンに引っかかりやすい内容をバンバン出すサイトがあるが、これはSEO対策技法と検索エンジン側のフィルタリングのいたちごっこになる。日本でも「デマンドメディア」に近いものとしてQAサイトでよく話題になるテーマばかりを集めて、差しさわりの無い答えを書いて、解決として広告に結びつけるというサイトがあり、これがGoogle検索によくひっかかるのだが、ちょっと読むと無価値なサイトであることがわかってしまう。今までGoogle検索に乗っかる広告手法はことごとく撃沈されている。
2012年に話題になった「ネイティブ広告」は雑誌で言えば記事広告のようなもの、TVならインフォマーシャルのようなものであり、視聴者に見る価値があるカタチで提示する広告である。しかしよく考えてみると、これも相当質の高いライターが書かないと読んだ後の納得感はないだろうから、それが企業ホームページであるかWebメディアであるかどうかは別にして、ごく一部でしか成り立たない。もし広告業界がこれからは「ネイティブ広告だ!」といって広告ページの粗製乱造をすれば、結局は「デマンドメディア」やステマと何も変わらない、読む価値の無いものが増えていくだけである。
ネットに広告がなくなることはないだろうが、ビジネスとして意味を持つのは誰もが見るポータルの好位置以外は質の高いものだけであり、それは全体の一部に過ぎず、ポータルやクリエイティブと同じく希少価値であり、広告ビジネスを広げていくものではない。つまりTVの時間枠や新聞雑誌のスペースに相当する「在庫」はネット上には存在しないのではないか。しかし利用者から見ると広告に代わるものはある。リスティング広告でもAmazonのお勧めでも、アフィリエイトでも、何らかの文脈を背景に持つリコメンドで、これはさらに発達していくであろう。このリコメンドよりも強力な広告は作れるのだろうか?