投稿日: Oct 29, 2010 11:25:41 PM
ブレないSteveJobsを尊敬する方へ
iPadでアプリを買ったり、バーチャルグッズを買うことが増えていて、iPadが新たな世界を拓いているのか、今後はiPadでなくても他の端末でもそういった方向に進むのかというのが一つの焦点だ。SteveJobsがXeroxパロアルト研究所に触発されてMacのような製品開発があったことを記事『ホンモノの未来像』で書いたが、Appleはそれ以前のパソコン製造業者の時代から、新たなライフスタイルを創り出すことのディレクションをする会社のように変化した。要するに今までのSteveJobsがやってきたことは、未来を発明することではなく、未来の先取りを実現してみせることで、別に世界征服をしようとはしてこなかったと思う。今までもネットでソフトウェアのダウンロード販売はあったが、iPodは$1とか100円などワンコインビジネスの門戸を開いた。その先の展開として今行われているいろいろなことがあると思える。
iBookStoreで雑誌の単品販売があっても、定期購読の申し込みが当初なかった理由も、SteveJobsのアタマの中には今すぐ売り上げを上げることよりも、読みたい時にスッと買う習慣を人々に経験させたかったからではないのか。ワンコインビジネスは、通りすがりにコンビニや新聞スタンドでちょっとしたものを買うモデルだ。つまり個人なら人生のテーマとか会社なら事業の必要上、非営利組織でもミッションなど、重いテーマで集中してリソースを割り当てるような対象に対して、「ソリューション」という大上段な取り組みとか設備投資を促すようなことをSteveJobsはしない。そういった分野もあるが、それはエンタープライズ向けに商売しているIT業者がいくらもあるので、世界が分かれている。DellとかBrackberryの対象がそのようなもので、一見するとスマートフォンを指先で操っている点ではiPhoneやiPadと類似でも、その人たちはワンコインビジネスなんて考えていないだろう。
エンタープライズ向けは合理性が第一だから、大企業のビジネスとして捉えどころのない水物コンテンツのワンコインはやりにくい。しかし水物コンテンツもネットでビジネス化できるという読みがある人も出てきた。ソーシャルメディアを行き交う「通りすがり」の人が気に留めるような何かがあった時に、それを商流に結びつけるような、普段の人々の息遣いに合わせた情報サービスをネットで行うイメージだろう。これは従来の商品のマーケティングとは発想が異なるだけでなく、そもそも根本的に異なる経済を指向しているように思える。20世紀に巨大化したアメリカのユダヤ資本のマスメディアやハリウッドやTV業界と比較すると、一種の地下活動のようにパソコンやネットの文化は進んできた。だから日本ではポータルサイトがマスメディアと提携しようという考えが出たりするが、アメリカでは既存メディア企業とタイアップしてデジタルメディアを伸ばそうというのではなく、オルタナティブ経済のような形で伸びようとする面もある。
レコードや映画も最初は珍しい見世物として小屋でのワンコインのサービスであった。それが音楽ならレコード(50c~$1)とかJukeBox(iPodはモロに競合する)などに、新聞雑誌もワンコインのサービスで生活の身近なものにして大きな企業にしたのはユダヤ系のビジネスだった。それらと一線を画する意識でネットビジネスがあると思えるし、それと同時にユダヤ系と同じくらいに非常に独立心の高い取り組みであるともいえる。これらは20世紀のメディア産業史から考えられることで、SteveJobsが反ユダヤ的であるというと言うつもりはないし、むしろSteveJobsはレコードや映画産業の黎明期のユダヤ人的でもあると思うのだが。