投稿日: Aug 02, 2013 12:25:32 AM
アメリカだけの問題ではない
アメリカはスノーデン氏が持っている爆弾情報がどの程度のものなのか、吟味しながら慎重に動いているようだ。アメリカ国内では憲法違反に当たるような個人情報利用は行われておらず、取得したデータはきちんと適切に管理されていて、それほど頻繁にはアクセスされてはいない、というような弁明をしていて、スノーデン氏の暴露が事実であるにしても、一般人にとっては害の無いもので、あくまで国外に矛先をむけた安全上の制度であることを強調している。
世論の形成としては、国家の安全対策を邪魔するスノーデン氏は裏切り者、ということにしたいらしい。
一方ヨーロッパでは、アメリカの情報管理が外国人にまで及んでいることを問題にすることが多くなった。ドイツの雑誌だかに載っていた話は、北欧の人がアメリカに観光ビザで入ってアルバイトをするようなことをフェースブックで書いていたら、アメリカの入管でストップがかかったことを採り上げていた。これは冒頭のあくまで国外に矛先をむけた施策と言う点ではアメリカの言い分どうりである。アメリカに行く際には、I-94というのを書かされるが、これが既にビッグデータ処理になっているのである。
個人情報に関したビッグデータ処理が公安や警察と結びつくと、人違い逮捕というのも増えてくる。最近アメリカのニュースで自宅の庭においた自動車の中に居たら、警官が入ってきて撃たれたという人が居た。何らかの情報が入って、警官がその家に行ったのだが、警官が身に危険を感じたから発砲したのだと言う。先のジマーマン裁判も身の危険を感じて発砲して死なせてしまっても無罪なのである。誰かがそういった誤捜査なり行き違いで傷ついたり死んだとしても、それはその現場に居合わせた者たちだけの問題ではなく、その元となるデータやデータ処理が間違っている場合もあるだろう。
つまりビッグデータ処理によって、「風が吹けば桶屋がもうかる」式の迂遠な仮説がいろいろなところで検証されるようになったならば、人の想像を越えたヒドい勘違いな行動も増えていく可能性がある。情報処理でいえばエントロピーの増大である。従来のCRMであれば性別や年齢を入力間違いしていました、みたいな単純な原因究明で済んでいたものが、人間には原因が理解できないものになる可能性がある。
コンピュータはアルゴリズムの組み合わせで働いているだけなのだが、何が起こるか、どうしてそうなったのか、人には検証不可能な世界に入ろうとしているのだ。「コンピュータがそう言っている」を根拠に人が行動するというのははなはだ無責任なことなのではないだろうか。