投稿日: Nov 18, 2010 10:38:34 PM
メディアというビジネスは成り立つかと思う方へ
出版の多様性については度々言及しているが、人が触れるすべての情報が出版の対象であるともいえるのだから、幼児向けからノーベル賞候補の論文まで紙のページを束ねたという点では同じでも、出版物の形も扱われ方も多様であるのは当たり前である。この多様性は長い歴史で出てきたもので、出版の本質といってもよい。ただ産業革命を受けて19-20世紀に爆発的にひろがり、新聞・出版というマスメディアも登場した。マスメディアという属性の方が後から出てきたものである。
商業出版をしている人からは、電子メディアは吹けば飛ぶようなもの、儲からないもの、という評価がされてきた。これは出版はマスメディア的なビジネスが当然という見方からくるものである。しかしそのマスメディアは単に売り上げが下降しているのではなく分解されはじめている。ポータルサイトのニュースであれ、YouTubeであれ、マスメディアコンテンツはフラグメント化してデジタルメディアに流れている。またBlogやSNSのようにメディアのコモディティ化が進行している。これはコンピュータがコモディティ化したのとネットが組み合わさった結果である。
つまりデジタルのメディアを作るのに大工場や集中処理は必要なく、誰でも参画できるのだが、だからといって誰もが出版をするようになるわけではない。電子書籍に関する誤解もそこらにある。CPUがいろんなデバイスに組み込まれたように、デジタルメディアはビジネスや商流に埋め込まれるようになる。ゲームがゲーム機から離れてケータイやSNSに組み込まれるのと似ているところがある。出版の多様性は人間の営みの多様性からくるものだから、マスメディアが減った分は各々の営みのIT化とともにメディアも分解されてITと一体化していくことになる。おそらく一人当たりの受容情報量は変わらないだろう。
リアルとバーチャルの2つの世界は「クリック&モルタル」といわれたが、いまこれらは一体となっている。リアルのビジネスの背景には基幹システムのIT化やSCMなどがあり、社内システムが「クリック」になっていったので顧客ともネットでつながるようになった。こういったところにメディアも合流することがある。今後いろんなビジネスプロセスや学習、エンタテイメントなどにもメディアは組み込まれて、情報多様化の世界をリッチにしていくだろう。
ネットの巨人として検索エンジンやECポータルやSNSプラットフォームがある一方で、分解されたマスメディアを使った多様なメディア利用が起こりつつある。これらの潮流をメディアのダイバシティと捉えて、MEDIVERSEという語を考えてみた。