投稿日: Feb 10, 2011 11:35:27 PM
R25の次の世代を考える方へ
若者に対しては何々世代というラベルを貼ることはいつも行われている。そういう十把一絡なとららえ方を振り回すマーケティング論には眉唾な印象を受けることはよくあるが、本当かどうかを検証する方法はなかった。アスキー総合研究所が行っているメディア&コンテンツサーベイ(MCS)は、日本のインターネット利用者人口の構成比に対応させた1万強のサンプルに、どんなメディア・コンテンツを好み、どのサービスをどのように利用しているのかについて、300強の設問のアンケートをまとめたもので、主にメディア関連のライフスタイルを性別年代別に把握できて、いろいろな角度から検討することができる。
ただしMCSのレポートは膨大で、また端から読んでいくようなものでもなく、もっと簡便なサマリが欲しかった。先日発売された遠藤諭氏の「ソーシャルネイティブの時代~ネットが生み出した新しい日本人」(アスキーメディアワークス) は標題どうり、1990年前後生まれでインターネットやケータイの中で育った人たちの価値観やライフスタイルに絞ってサマリしている。この中で、第1章あたらしい日本人、第2章ビンボーハッピーな生き方、の2つが秀逸で、40代後半以上のオジさんにとっては、改めて自分の子供の理解ができていなかったことに気づかされるものである。第3章以降はソーシャルメディアやスマートフォン、ITやクラウドの今後などを、今の若い人の反応を通して見ている内容である。これはこれでトレンドの理解としてよいが、まだ日本ではソーシャルメディアもスマートフォンも浸透度が低すぎるので、1~2章のように直近5年のライフスタイル変化を分析した生々しさはない。
ビンボーハッピーな生き方については記事『2011年の注目点』でも触れたが、かつての「みんなが中流」という日本の姿の方が異常であったという見方で、こういった若者が日本を背負っていくことになると、これは国内のマーケティング全体に見直しを迫ることになる可能性がある。日本社会の成熟化とは、かつての日本固有の特殊事情の崩壊で、日本人のメンタリティが急に変わるとは思えないものの、グローバルな競争にさらされると社会と企業や企業間の関係は日本の経営方式が通用せずに、企業は対応に苦慮するだろう。なぜならマーケッティングのターゲットのビンボーハッピーは世界共通のライフフスタイルだから、日本人もそっちへの移行は障壁がないのである。ソーシャルメディアを効率的な方法論として考える前に、上記の若者像と向き合うことが先決である。
しかし広告やメディアのビジネスは日本固有のビジネスモデルが根強く残っている産業で、たとえば雑誌の値段にしてもアメリカの年間購読ではびっくりするほど安く手に入れることができるし、マスメディア広告も安く出す方法はある。そういったアメリカの既存メディアでさえソーシャルメディアの前には大きく傾いているのだから、日本式広告・メディアビジネスの前途の暗さはもっと深刻である。一方でジャパネットたかたのように、メディアを縦横に駆使して生活者の前に立って、実演販売のようなアナログな強みを発揮しているところもあり、メディア周りのプレーヤの入れ替わりを予測させる。新たな日本人につきあっていけない旧日本式の崩壊は加速されそうだ。