投稿日: Jul 12, 2012 1:21:54 AM
一度抽象化して考えてみたい方へ
商品特性から書籍のビジネスを考える場合には専門書と一般書に大別されることが多い。専門書は目的がはっきりしているので読者が限られるもので、業務用、学術、専門分野などごとにある。育児・幼児書のように普遍的な内容でも関係ある人は限られる。その範囲で関連情報を連鎖的に提供していってリピートで購入をしてもらう深堀型のマーケティングになる。そこで利用者の登録制とかクラブの運営などもでてくる。内容的には統計など定期的に情報の更新をする代行サービス的なことが含まれるとか、育児・学習では利用者が1年づつ持ち上がっていくので、内容的にはあまり変わらなくても学校的な運営をすることがある。
しかしこれらは顧客数があらかじめ把握できるために、その中でのシェアの奪い合いの競争になり、コンテンツの質やサービスでしのぎを削ることになり、急速にビジネスがブレイクするようなものではない。教育産業がアジアとかブラジルに進出したように、日本で築いたノウハウやシステムを使ってグローバル展開することで、伸びつつある。近年は塾と出版が次第に緊密になっているように思えるが、それは検定教科書のようにひとつの本を大量に採用してもらうこととは逆に、コンテンツを分解してデータベース化して、多くの教材を派生させるとか、パーソナライズ化したサービスが重視されているからである。
一方で読者を特定せずTVの番組くらいのターゲットの絞り方で、F1とかM2とか層別をしている一般書は、うまくヒットすると莫大な利益をもたらす。出版というビジネスを水モノとかギャンブル性があるというのは、こういうマス対象の場合に限られるわけで、マーケティング的にはスーパーで売ってるようなものと似たことになろう。マスマーケティングでは取引は一過性になりがちなので、社会現象の把握をベースにしてトレンドを見抜くとかそれに合わせたブランディングと、いろいろなメディア露出や販促が必要になる。
以上専門分野向けとマス向けと2つのマーケティングのアプローチが行われているが、実際にはマス対象でも利用者のリピートは期待したいし、専門分野でも何らかの横展開をしたいなど、両方を併せ持つことも求められる。と同時に新たな取り組みとして進んでいるマーケティング努力は、専門分野では具体的な利用者を特定する方向であるし、マス向けではネットやTVでのトピックスと連動して販促をすること、というようにそれぞれ特化していくであろう。
関連情報 2012年7月25日(水) 『出版のマーケティングを見直す 復刊ドットコム』