投稿日: Dec 23, 2011 1:43:45 AM
紙面の画面化は避けられないと思う方へ
先日、作家7名がスキャン代行業者2社を提訴 というニュースがあり、パソコン初期のソフトレンタル業者のことを思い出した。レンタルを利用する人はソフトをコピーして使うという理由で違法となり、業者はつぶれるか業態を変えることになった。sofmapは変えて伸びた会社であり、中古販売など新たな分野も築いた。しかし業者の変化だけではなく、パソコンソフトが期間限定のお試し版を配るように変化したり、フリーウェアやシェアウェアという形態も広がった。つまり、コピー=違法、という取締りが行われるだけではなく、この問題を乗り越える使われ方とか、開発者と利用者の関係が構築されたのである。これはビデオやCDのレンタルも似たようなもので、発売後一定期間おいてレンタルの許可をするようになった。
今回のスキャン代行でスケープゴートになった2社というのは、この提訴に先立って行われた、出版社からスキャン代行業者への質問状 という誘導的というか罠のようなアンケートにおいて、「当社は今後、差出人作家の作品について、依頼があればスキャン事業を行う予定です。」という項目にイエスと答えた会社で、権利者の意向を無視する姿勢を示したことが違法性の根拠にされたのであろう。しかし現実には図書館・図書室・資料室でコピーの依頼をする際に、こういったオプトアウトを実施しているところはどこにもなく、企業内では新聞の切抜きを資料として使うために複製依頼することは日常的にある。スキャン代行は本質的にはそれらと同質であると思えるが、看板にスキャン代行とか自炊という書籍関係者を逆撫でするような営業なのでお灸を据えようということになったのだろう。
すでに企業内では複合機を使って紙の書類をPDF化することは常識のようになっているので、紙面を画面に変換すること自体は日常感覚として何も疑問は持たれていない。ただ出版界だけが権利をたてにこだわっているようなものである。これは権利の正当性を維持するというよりは、権利をもとに今日の情報環境の中でどのようにビジネス展開をしてよいのかわからず、もがき苦しんでいる姿だといえる。本当は隣接分野や他分野の人たちとの交流の中で新しい道をみつける努力をもっとするべきなのだが。紙面の画面化は抗し難いものという認識はまだ薄いのだろう。
自炊の利用者の方に目を向けると、スキャン技術やデジタルカメラの技術が進んで、新たな方法はいっぱい出てくるので、そこでも今までのスキャン代行業務は 狭まっていくだろう。例えばiPhone利用者が自分で紙のページを撮影すると、歪みを明るさなどを補正して電子書籍のようにする自炊アプリなども出てい る。
マクロ的に言えばGoogleBooksのように過去の紙のドキュメントをデジタル化することは人類の務めでもあって、過去の著作物はそれによって人目に触れるものとなり、評価もされるものとなる。それと権利者に何らかの還元がされる仕組みとは別である。スキャン業者も1冊100円で電子書籍化という作業をする代わりに、権利者と一緒にビジネス化をすることを考えるように切り替えれば、何らかの新しい業態を見出せるかもしれない。