投稿日: Dec 10, 2013 1:29:14 AM
プロデューサの自覚
昆虫交尾図鑑の絵を描いた美大生が、人の撮った写真作品をベースに描きなおしていったということで炎上している。確かに元の写真を撮った人からすればパクられたという気持ちになるのだろうが、職人的にはそういう描き手も有りえると思う。だからこの人が将来の道をふさがれてるとは思えない。
自分の好きなことをやって生きていくことは奨励したいが、しばしばそれが元でトラブルになることがある。マッドアマノvs 白川義員 のパロディ裁判というのもあった。別に悪意がある行為でなくても問題を避けるための知恵が必要になり、それはクリエータの側には求めても仕方なくて、その作品を商業化する場合に考えるべきことである。
つまり冒頭の昆虫交尾図鑑の場合は、この絵がどのように描かれたのかは、版元である飛鳥新社が確認して出版の適不適を判断すべきであると思う。出版社はコンテンツに関しては何の権利も持たなくて当然だと思うが、出版に際しての企画やサポートをする編集者にはプロデューサとしての権利は与えるべきであり、場合によっては著作権の半分を得てもよい。しかしこういった問題が起こったときには責任の半分も負わなければならない。
例えばこの出版企画の場合、美大生が昆虫の交尾が大好きだったのなら、プロデューサはまず美大生に自分のカメラで交尾を撮影させるところから始めれば、それをベースに絵にしても誰も文句は言わない。実際に交尾のタイミングで撮影するのが大変であるとしても、素材として自分で昆虫を撮影して、そこから交尾のポーズに描きなおすことは可能だろう。
私の推測では、美大生は描くのが好きなだけで面白がって交尾写真を絵にしていて、昆虫の交尾に関心があったのかどうかは怪しいと思う。それはそれでよい。また資料として他人の交尾写真を参考にすることもよい。制作に資料を使うことはあたりまえだ。だからちょっとした配慮をして、ちょっと遠回りな制作手順を踏むならば、問題なく出版できたはずのものである。
この場合は、徹頭徹尾他人の写真のパクリであったようだが、これに類した他人の作品のリメイクはしばしば行われていて、それが問題にならないのは出版の際の「配慮」があったからである。だから今回はパクリを商品化したことの責任をすべて美大生に負わせるのはスジが違うように思う。
追記:飛鳥新社の見解