投稿日: Jun 07, 2010 1:47:56 PM
黒船とのタイアップは一長一短あると思う方へ
先の記事 メディアを巡る誤解 TOP10では、黒船は必ずしも敵ではないといった。敵とか味方とか言う前に、GoogleでもAmazonでも実態を調べると、ものすごいことをやっていることに気付くだろう。彼らの投資額、築いたデータセンタ、技術力などを見ても、とても今から同じようなことをしてかなう相手ではないところにいる。時々日本の国の危機管理という視点で対抗すべきだという意見があるが、それを実現するにはどのような人材や予算が必要か考えれば、国産検索エンジンも竹槍程度でしかないことがわかる。もし日本の人件費が安ければ、力技でデータセンタをたくさん作れるだろうが、それを呼びかける人もいない。つまりもう結果は見えていて、攘夷は通用しない。黒船とは一緒にやっていくしかないのである。
アメリカは極端な国で、知財権をうるさく言うかと思えば、GNUとかフリーウェアも積極的な人が多くいるように、ネットによるビジネスもリアルビジネスに対抗して頑張り抜いたからここまで来たといえる。10年前は「クリック&モルタル」という、リアル・バーチャル並立モデルがいわれていたので、両方共通のクレジットカード決済が多かったが、その後は「モルタル」は脱落し、ネット専業が伸びてPayPal決済が主流になった。Yahooオークションは散々でeBayが勝った。この10年は下克上のような変化があったといえる。
こういった既存勢力と別のところから出てきた人たちが頑張りぬいて大きな影響力をもつようになる変化は日本ではまだ経験しておらず、ECが経済に変化をもたらすとまでは思わない人も多い。電通の売り上げを見るとインタラクティブ広告のみ伸びているので、ネットは広告媒体だと思うかもしれないが、これから本番を迎えようとしているのは、広告を超えて商取引そのものがネットで変化することであり、そこから逆にメディアビジネスのビジョンも考えるべきである。つまりメディア企業はひとつの業界を成しているという姿ではなく、販売支援や顧客サポートなどなど顧客のビジネスと深く関わったものになろうとしている。
現状の日本国内市場向けではPayPalやeBay上でのECはすぐには困難だが、かといって日本にECでの利潤配分を仕切れるほどの会社はない。そこに今年AmazonやAppleのコンテンツ流通が日本でも認知されるようになるだろうから、それらがeBookも含めて有料デジタルコンテンツの突破口になるだろう。しかし黒船プラットフォームの取る流通マージンは(大したことをしない割には)大きいので、実質流通の中抜き効果は出にくい。こうなって初めて世界に向けて売る必要がない日本仕様のコンテンツ流通プラットフォームの必要性が叫ばれるだろう。その前に黒船で早いうちから経験を積んでおくのはアドバンテージとなるだろう。