投稿日: Aug 28, 2012 1:27:8 AM
過去のプログラムが使いにくいと思う方へ
これから本格的に普及しようとしているスマホやタブレットでも、装置としてはコンセプトはほぼ終わっていることを記事『利用者不在の戦い』で書いた。あとはコンテンツを用意して使うだけのように思えるが、それは考えられたよりもずっと遅れてしまっている。電子雑誌はiPadの登場のころに一度盛り上がったテーマだったが、一旦盛り下がって、再び挑戦しようというところも出てきている。つまりタブレットの最初の頃はPCのアプリをそのまま持ち込んでくることが多かったが、それは必ずしもしっくりはこなかったのだろう。教育現場では記事『現場視点で考える電子教科書』で触れたデジタル教科書教材協議会以外にもいくつかのグループが活動していて、iPadを生徒に触らせてアンケートをするような発表がよくある。この場合に現場主導ではPDFが多く、SIerの実験的な場合はアプリが多い。
SIerの実験とは、モバイル環境で使えるタブレットに向いたアプリを作るということなのだろうが、これは、クラウド、SaaS、PaaS……といろんな新しいパラダイムへの移行もあるために、実現方法の選択肢が非常に広く、一見すると似たアプリでも中身は全く違う原理になるので、なかなか枯れたアプリになるには時間がかかるだろう。こういった世界に足を踏み込みたくない現場側の人は当面PDFとかEPUBに退避しているのが安全なはずだ。しかしスクリプトを動かす必要がある動的なコンテンツの場合は、開発したものが短期間しか使えないかもしれないというリスクがあるので、このリスクをSIerは利用者に押し付けるわけにはいかず、自分で負うしかないだろう。ということは従来のIT開発のような高額の初期投資を利用者に求めるのではなく、月額幾らとか1件幾らというサービスモデルになるはずだ。
かつてのIT屋さん、特にホストのSIerは、ソフト開発をして、それが使われようが眠ったままであろうがお金は入ったが、サービスモデルではわずかなお金しか動かないので、おそらく有名なコンピュータ会社ではなく、聞いたことの無いようなSIerがこの分野を担うことになり、これが現場・利用者からするとどれだけ信頼して依頼してよいものか迷うことになるだろう。前述の電子教科書のグループのミーティングでも、タブレット向けアプリ開発のデモがよく行われているが、はっきりいってそれを見ただけではとてもそれに賭けるかどうかの判断はできない。お金をいただいている客でもある生徒・学生たちが費やした時間はもう戻ってこないので、教育現場での実験には限度があるからだ。
つまりコンピューティングそのものが、PCのようにデスクトップにインストールしてするものでもなく、それぞれの組織内のサーバーでもなく、かといってクラウドで全部するのでもなく、HTML5のようにタブレットのローカルでも処理をするような、中途半端な時代に入ってきたといえる。これらの組み合わせで実行されるアプリを作って売り歩こうというのは無理なのかもしれない。むしろ、記事『懐に立ち入ったサービス』で書いたように、アプリもコンテンツと同じように、現場に入って一緒に取り組むような業者が求められているのかもしれない。
そのように考えると、教科書・教材、学習プリント、実験、レポート、情報共有、などそれぞれに必要な要件を中心に、個別に教育アプリを組み立てられるプラットフォームが必要かもしれない。
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