投稿日: Apr 25, 2010 11:47:39 PM
電子書籍の話題にデジャブを感じる方へ
電子書籍とか読書端末の話題に引きずられる格好で、課題多き日本の出版界を改善しようというような話も増えている。以前書いたが既存メディアのこんな点がダメだという本が多く出版され、雑誌でも東洋経済のようにそのテーマで売れたりする。しかし一見すると議論が盛り上がってきそうな気配だが、その実は殆どループ状態で、過去から何度も繰り返された話が渦を巻いているだけである。渦の回転が加速して、早く振り切れるの願うばかりである。
話の行き着く先はもう見えていて、例えば再販売価格維持の緩和があろう。なぜそうするのかについては議論は尽くされていると思う。フォーマットを海外に牛耳られないためとか、海外のプラットフォームに牛耳られないには、というような話もいろんな機会にしてきた経験がなぜ今もって出版界には通用しないのか。ともかく出版界を変えようという話はこの20年間変わっていない。誰が猫の首に鈴をつけるのかという段になると、誰もしない。また抜け駆けはしない。という護送船団根性が出版界を覆っていた。
パソコンが普及した1980年代中ごろにアメリカでパソコン通信がブレイクし始め、草分けのTheSourceという会社を訪問してマニュアルや印刷物いっさいがさいをもらってきて、真似っこBBSを作ったことがあるが、そのSourceで親会社はリーダーズダイジェストだったことを知った。そのころも未来の出版というのはよく議論されていたのである。紙メーカーのミードもデータベース事業を始めていてオハイオに行ったことがある。その頃のミードデータセントラルの電子情報サービスでlexisnexisは今日もそのままある。当時の他に消えたサービスもM&Aされて継承されたものが多い。
インターネットの時代になってアメリカの情報メディアビジネスが世界的に躍り出たのは、それ以前からの経験の積み重ねに大きく依存していると思う。日本でも日経などはその類である。ボイジャージャパンも18年やっている。少々短絡的だが簡単にいうと過去20年デジタルメディアに関して何もしてこなかった会社が今更デジタルでのビジネスモデルを考えようというのは遅すぎる。今の出版社の経営者でデジタルメディアをやるべきだ考えるのなら、自社のビジネスの延長上に考えるのではなく、資本家に徹して若い人を応援してやるのが一番いいと思う。
アメリカではジジイでも20年のデジタルメディア経験のある人が居て侮れないが、20年空転していた日本のジジイの出る幕はない。出版界の最大の課題は思考のループからの脱出だろう。