投稿日: Oct 03, 2014 12:30:4 AM
今日では紙の印刷と同時にWebを作ることが多い。実際にはWebが先に公開されて、それと同じ内容の印刷物も配布されることになる。そんなわけで印刷会社がWebも作っていたり、あるいはWeb用に素材を提供しているケースが多い。
しかし商業印刷のかなりの部分を占める商品カタログに関しては、Web化することでの進歩とか進展というのがあまりなかったように思う。紙に比べてWebに情報を出すことで多くの人に見てもらえるという効用はあるが、それがどれだけビジネスにつながるかというと、楽天の出店社の平均的な売り上げをみてもわかるのだが、ただカタログをWeb化しただけでは金はまわらない。
今までの店舗や営業などのリアルビジネスにはなかったものがWeb上に出現するならばともかく、従来からあるようなビジネスをWeb化するだけでは、サポート業務の省力化程度の効果しかないかもしれない。Web上にカタログを作ったとしても、そこに潜在顧客を誘導するのにリアルビジネス以上の手間やコストがかかったのでは、やりたがる会社はあまりないのは当然だ。つまりビジネスのフロントとしてWebが使える分野は、ネットの利用者の目につきやすいかなり限定的なものであったともいえる。
タブレットが登場した時に、営業マンや接客の人が顧客に説明するプレゼン資料やオプションメニューとか事例のマテリアルを入れるとかモバイルで使うことが起こり始めた。中には営業マンが何千人いる会社でiPadを何千台購入してそのようにしたところもあったが、意外に波及せず、いくつかあった案件も尻すぼみになった。
当時すでにWeb以外にオフラインでも使えるPDFとか電子カタログのパラパラめくりとかいろいろな表示方法はあったのだが、いずれにせよ過去からあるさまざまな文書・資料をどこかに集めて目的ごとに使えるように整理・分類し、フォーマットやユーザインタフェースを統一するという、コンテンツ側の再構築が追いつかなかったことが最大の障害要因であったように思う。
この作業負担を現場の営業とかに負わせるわけにはいかないし、外注すれば相当の費用がかかってしまう。しかしこれは時代とともに解決される。従来は印刷してもらうのにデータを提供していたのを、最初から電子ドキュメント・電子カタログに使うように長期的には変わっていく。しかしそのきっかけがなかなか無かった。
印刷用に作られたPDFをタブレットで使ったとしても、カタログを改定しなければならなくなった場合にPDFでは社内で手におえないからである。もう一度外注先の印刷会社に改定作業をしてもらったのではコストも時間もかかる。だから改定が容易なWebカタログの価値があったのだが、Web情報のメンテナンスも実は社内では容易にはできなかったのである。
綺麗なカタログを作るのは外部専門家に依頼するにしても、営業などが日常業務に使う電子カタログのメンテナンス作業は社内で可能になって、それはMIcrosoftOfficeよりも容易なことが望まれる。それが記事『経済の沈滞と情報のクローズド化』で触れた、SoftBankのvisualmallのBOOK SUITEというEPUB3コンテンツ管理ツールの狙いであったようだ。このSoftBankのスマートカタログ自体はPDFのカタログ配信サービスとしてANAとか大企業に300社以上利用されてきたものであるが、それらをEPUB3化してメンテナンス可能にしたものといえる。
おそらくこのツールをもってしても営業などの現場で情報更新が完全になされるとは思えないのだが、必ずしも印刷会社に頼まなくてもよくなるという点ではカタログ製作の革命ということになるかもしれない。
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