投稿日: Feb 01, 2012 12:22:48 AM
堂々巡りから抜け出したい方へ
実際のところ殆ど儲からないにもかかわらず、eBookなどをしこしこ10年以上にわたって断続的に続けている日本のメディア産業は、いったいこの間にどのようなことを学習したのであろうか? 新規ビジネスの最初の段階は儲からなくても調査や人材確保・育成の意味もあるので、何らかの成果が得られることはある。これは電子出版に関していえば1980年代からPCが普及しインターネットが普及するまでにだいたい目途のついた部分である。
Appleはその後にiTuneのようなコンテンツ販売を立ち上げ、Amazonは本やCD・DVDなどの通販を確立し、ゼロ年代半ばからはまた新たなフェーズに入ってきた。AmazonはeBookでどのようなビジネスをするのか練ってKindleをコンテンツホルダに認めさせさせたし、AppleはiPhone iPadというデバイスを普及させて、次のステップに移行しようとしている。
このように取り巻く状況は刻々と変化し、時々大きくフェーズが変わってしまうと、初期の調査や人材確保・育成で得られたものもリセットされてしまう。つまり日本で20何年の電子出版の中には何度か状況のリセットがあって、それを乗り越えられたのはボイジャーや大手印刷会社の行うサービスの一部だけなのである。実際には独立系の出版社が独自で展開して成果が出ているいるものがあるのだが、これは横には波及していないので、日本のメディアビジネスを変える要因にはなっていない。
このような状況変化は今後もあることなので、ずっとメディアビジネスを続けていくのに必要な取り組み方には、あるマネジメント方法があるな、ということが浮かんでくる。つまりPDCAのようなもので、①仮説検証②ポジショニング③集計分析④選別、の4段階をくりかえすことだ。
①仮説検証
まず近未来的な状況を想定してビジネス仮説を作って、それに向けて何らかのサンプル事例を作り、そのビジネス仮説の評価を集めることである。これがそのままビジネスとして伸びてくれればよいが、まず考えながらやって見るというのが重要で、近年はITの敷居が低くなった分だけ、ここをどれだけスピーディーに行えるかが重要である。3年かかって姿を見せるのでは遅い。着想からサンプル事例は半年でできなければならないだろう。
②ポジショニング
印刷の世界ではDTP化と平行して、それまで専用機でバッチ処理していたものが自動組版という形で浸透したが、これは印刷界以外からも多くの参入があったし、今ではそちらの方が主流になってしまった。eBookをどう作るかなども今はさまざまなところからツールやソリューションが出てきていて、傍からみるとどれも同じように見えてしまう。だから「何ができます」というだけではなく、その会社がどんな顧客と向き合っていこうとしているのか、サービスの肝は何かを理解してもらうことにもっと力を注がなければ、サンプル事例からの展開は難しいだろう。
③集計分析
一般にソリューションベンダーは「お困りごと相談所」のようになっていて、自ら営業をすることは少ないのだが、デモを見せながら企画提案を足で行っていかなければならない。しかしすぐにビジネスにつながる話はそんなに無いに決まっている。むしろデモや提案をした際に相手がどのような反応をしたかなどのフィードバック情報をちゃんと集めて分析することが、最初は曖昧なビジネスを絞り込むのに必要になる。だから営業はデモや提案で情報がとれるようにアンケートを仕込んでおくべきである。デモのその場であっても、帰社してからでもキチンとデータをとるようにしたい。そしてそれらを見渡して、その後の攻め方を決める。
④選別
個別の案件として扱うようになってきたら、顧客が実現したいことのうちで、自分のビジネスとして稼ぐところと、自分で手を出すよりもアリモノを使った方が顧客も自分もよいところ、また顧客が自分でやったほうがいいところ、などの選別をしなければならない。ECでも顧客が自分で面倒なフォームを埋めてくれると割引をするというのは、便利なユーザインタフェースを開発するよりも割引いたほうがよいという判断だろう。いずれにせよ自分の利益になることだけやって、後はよそでやってくださいという返答はできない。最初のビジネス仮説全体をコーディネートしないと、価値は感じてもらえないのだから。