投稿日: May 18, 2015 11:45:51 PM
1年前に経営統合の発表があった、KADOKAWA・DOWANGOのH25年3月期の経営を比較を、記事『コンテンツとプラットフォーム』に書いたことがある。DOWANGOの平均年齢31,6歳 581万円 vs KADOKAWAの平均年齢44,3歳 1,015万円 となり、角川の方が7歳年上で収入が倍ほどあって、それでドワンゴの方が一人あたりの利益は1.5倍あるのだから、両者は組織としては相当アンバランスで、社内の激動が予測された。いわゆる古い出版系社員のリストラは免れないだろうと誰もが考えたと思う。
同じような業務をしていても、JALとANA、NTTとSoftBankのように、組織内部の人員構成とか人事的な違いで企業の業績は大きく変わるものである。もっとはっきり言うと、旧来のマスコミのように高給取りで中高年の社員が多い組織では、どの業界で何をやってもうまく企業経営できないだろう。出版界が不景気だと言うが、出版物のニーズがそれほど減っているわけではないのは、BookOffや図書館なども含めて考えればいわゆる「活字離れ」は起きていないことからも明らかである。つまり出版社が経営に行き詰まるのは人事面の圧迫なのである。
日本の出版社はこれ以上コストアップにならないように外注を増やして対応してきた。そうするといわゆる正社員の数は絞られてしまい、正社員の責任は重くなる。特に中間管理職は部下を育成し、外注をさばき、経営の側に立った行動も必要で、命をすり減らすような働き方になる。しかしかつての景気が良かった時代にノンビリ過ごしてきた中間管理職にこういう負担の大きい仕事をさせようとしても無理で、新しい管理者とか経営ブレーンが必要である。日本の民間企業はバブル崩壊後は必死でマネジメントの転換に取り組んできたが、出版界はマネジメントの転換が遅れていたように思う。
よく中高年の希望退職というのがリストラの先鞭として行われるが、こういう新たなタフなマネジメントに耐えられなさそうな人を除く効果があるからで、少々人件費が一時的に膨らんだとしても、耐えられなさそうな人を定年まで飼っておくよりはよっぽどマシだからである。ただそういう人が価値がないというわけではなく、専門能力が高い人もいるので、フリーランス(外注先とか)で活動できるようにしてあげることも必要である。某大手企業は優秀な外注企業を作るために独立を推奨している場合もあった。
問題は自立してはやっていけない名ばかり管理者である。KADOKAWA・DOWANGOの経営統合で今直面しているのは、そういう人たちの肩たたきが始まって起こった内部混乱だろう。しかし他の出版社と違って、KADOKAWA会長はメディアワークスを立ち上げた経験があるように、DOWANGOのことを理解できる人物であろうから、この混乱を乗り切って新しいメディア企業の姿を示してくれるのではないだろうかという期待も寄せられている。
業界としても版元たるメディア企業とフリーランスの間に持続可能な良い関係ができるモデルを示してくれればいいなあと思う。
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