投稿日: Mar 05, 2012 12:43:29 AM
多様な支援が必要だと思う方へ
経産省「コンテンツ緊急電子化事業」というのが慌しくなっている。東関東大震災の被災地域の持続的な復興・振興のために、約6万タイトルの電子書籍関連事業に約10億円の補助金をつけるもので、2月末から説明会が始まって、3月申請で事業開始が4月1日からというテンポなので、とても議論をしている余地は無く、従来ならデキレースの補助金事業である。私はJPO(一般社団法人日本出版インフラセンター)説明会には行っていないのでこの事業の実態は知らないのだが、被災地に求められているものは何かという議論を経て、被災地支援や復興と補助金の関係はもっと説明をしないと、被災地をダシにした補助金事業と騒がれる危惧も感じる。
すでに被災地や避難されている方を対象に図書の寄贈などの支援は民間でいろいろ行われている。いまだに生活の維持が課題の地域も多くあるので、あまり文化的な支援が先行しても申し訳ないという気がするが、今のうちに行っておくべきこともある。記事『未来を考える手がかりとしてのアーカイブ』では、失われた町の光景がGoogleのStreetViewやMapには残っていることを書いたが、過去の写真を集積して復興の手がかりにしようというプロジェクトも行われている。こういった作業は小中学校教育の授業に取り入れたらよいのではないかということも書いたことがある。自衛隊やボランティアの手で瓦礫や泥の中から拾い出された資料の整備のような膨大な作業が課題である。そういったことと、コンテンツ緊急電子化事業というのがどう関係するのかというのも注視していきたい。
下の2冊の冊子は、記事『石巻→女川を案内していただいた』に書いた、消えてしまった女川の港町に建物だけが残った生涯学習センター(写真下)4階の図書館にあったものである。このビル全体が水没したのでそこにあった本は紙が濡れてくっついてページが開けない。市販の書籍は上記のような外部支援によって持ち込まれたもので補えるとしても、郷土資料のような地元で作られ、商業的に出版できないものは、散逸したものを再び集めて、閲覧可能にしなければならない。その際にはeBook化がよさそうだが、そういった作業は出版関係者によって金で解決すべき問題というよりは、その郷土に関心がある人たちのボランティアに任せた方が、本来の主旨にあうはずだ。例えば自炊の達人たちが郷土史研究家を応援するのが近道に思えるし、そういったボランティアもあるのではないだろうか?
補助金の使い道として、出版の支援という名目はあまりにも限定的で、出版という形にもっていくつもりであっても、散逸・混乱した情報の整備をまず支援しなければならないのだから、まずはアーカイブや索引が自由にできるものが求められるのではないだろうか。まだ被災者は仮設住宅で暮らしておられるのだから、そこでもサイドビジネスができるような緊急電子化事業であってほしい。