投稿日: Aug 02, 2012 1:20:21 AM
ITは日常の延長上に発展すると思う方へ
韓国を始め諸外国で電子教科書の動きが本格化しつつあるのに、日本は複雑な意思決定や制度のせいでなかなか進まない。進まないがために勇み足で現場が失敗しないという効用があるとの意見もある。しかしITを使おうが使わまいが教育改革は必要で、紙かディスプレイか、というように問題を矮小化してしまってはいけない。タブレットやスマホを学生に持たせることは大学や専門学校で部分的に試みられている。それらを総合的に考えるところがなかったのだが、デジタル教科書・教材に関する可能性や課題解決法の提案をし、デジタル教科書・ 教材を活用した授業実践研究を行なうために、現場の教師と研究者が研究分野、 所属学会や研究会の枠を超えて集まる日本デジタル教科書学会が2012年5月に発足した。
デジタル教科書や教材に関する研究開発や導入支援に関しては、ITのいろんな分野から行われていて、それは教材以前にデジタルの教育環境を作るにはいろんな手立てが必要なことを物語っている。学内のWiFi化、サーバー管理、LMS、キャンパス間の通信、それと教員職員の教育などの足並みが揃わないと本格的な授業にならないからで、部外者がiPadでiBooksAutherがいくら無料で使えるといっても、簡単に教育機関が導入するわけにはいかない。
一般に電子教科書の効用として紙の教科書のコストカットや取り扱いの不便さを解消できると言うが、確かに生徒側にはいくらかのメリットがあっても、教育を提供する側は前述のような初期投資が馬鹿にならないので、コストを武器に電子教材を売り込むことは難しい。だから教育機関にとって大変な作業を引き受けてあげるようなパートナーが求められているのではないだろうか。それは学内のデジタル環境を安価で使いやすいものにすることから始まって、教材の元になる素材のデジタル化、教員職員の制作から配布に関する知識、などのようにiPadかAndroidかというまえに、日常の業務とあわせて準備が進むようになっていないといけないはずである。
そういう意味では学校側が出入りしている業者を集めて協力依頼をして役割分担を決めるとか、研究会を発足させる、実験を始め、電子教科書のロードマップを作って、それに賛同する協力者とともにオープンなプロジェクトをするのがスムースな進み方になるだろう。これはかつてのホストコンピュータメーカーが丸抱えで受注していたのとは逆のアプローチなので、学校側のIT戦略としての決断が必要になるが、おおらくホストコンピュータ以外の会社が連合でこういった方向の提案をするようになるだろう。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催