投稿日: Jun 28, 2011 12:53:45 AM
タダでの情報提供がずっと続くのかと嘆く方へ
既存マスメディアや紙媒体のビジネスが順調に推移している間は、Webやケータイにコンテンツを2次利用して、フリーでもサービスは可能なのだが、そのフリー情報が広まっていく先に本業をどうしていくのか、フリー情報が本業の次ステップへの変革にどのように役立つのか、という点ではほとんど失敗しているといってもよい。既存メディアのブランドの上にWebでもPVを稼いで広告ビジネスをするというパターンが多かったかと思うが、広告収入はそのような2次利用の世界でどんどん増える方向には行かない。ネット上で増える広告は、動画広告、facebook、Cookpad、その他ネット上で固有の発達したメディアになってきた。
当然ながらフリーの情報がなくなることはない。ニュースリリースや広報誌、お試し版、など紙媒体でもフリーはいくらでもあった。個人が行うBlogやソーシャルメディアは今後ともフリーであり、それは欧米の方が多くのオピニオンがネットにあふれているが、欧米では商業的なメディアのフリー部分は日本に比べてケチ臭くなっているものもよく見かける。つまり両者の比較からいえることは日本では法人のコンテンツホルダが無計画にダダ漏れ的に情報をネットに晒す傾向があるともいえる。そんな状況の中に『フリーミアム』が喧伝されると、ダダ漏れをしていると何かの機会が訪れると誤解した人もいただろう。
ネットの普及により、情報発生源においてネットにダダ漏れが起こるのだが、大抵の情報源とはメディアビジネスよりももっと手前の原始的な情報をそのままアップしているようなもので、そこから何らかの文脈を見出したり意味を見つけることは難しい。そこに立ち入って情報の交通整理して、人の知見につなげる役割がメディアである。その役割を感じてもらえたら有料のビジネス化がありえるだろう。それは前述のネットで芽生えた(会員制も含めて)有料コンテンツがあることからいえる。
一方紙の2次利用がネットで有料コンテンツに成り難いこともはっきりしてきた。それはネット利用者から見て、どんな役割を果たしているのかという価値がわかり難いからである。発行者側は紙のブランドがネットでも通用するだろうから、メディアの役割は改めてアピールする必要がないと考えていたのだろうが、紙媒体のネットでのフリー版に一定のPVがあるにしても、それほど価値ありと思われていないことに気づかなければならない。あるいはすでに紙のコンテンツが通用しないことを感じているが、紙のビジネスを脅かすほど影響力をもつネットメディアを自分で作るわけにはいかないと判断しているのかもしれない。
安易なフリーミアムで時間稼ぎをしていても、いずれ生活者から「王様は裸だ」と指摘される時がくるだろう。紙ブランドのような大規模なものでなくてもよいから、ネット利用者にもはっきり価値を感じてもらえるようなデジタルメディアに着手することが先決で、それがあるなら宣伝媒体としてネットの無料コンテンツも意味あるものとなるのではないか。