投稿日: Oct 01, 2012 1:11:20 AM
マルチユースがビジネスに結びついていないと思う方へ
海賊版コンテンツなどを違法と知りながらダウンロードすると罰せられるという、論理矛盾な法律が発効された。これは違法なアップロードを取り締まれないから、利用者を取り締まるということだろうが、「暗黒」な政策である。例えば映画館で上映されている映画にわいせつ性があるとなった場合に、わいせつ性を見越して見に来た人も捕まえるようなものだ。レンタルビデオからホテルや有線のビデオでも同様だろう。つまり違法性を利用者が検証しなければならないという責任を負わせている点に無理がある。かつて公害の裁判があった際も、被害者が因果関係を証明できないと裁判所も行政も取りあってくれなくて、門前払いにされた。しかしPL法は製造者責任という立場を明確にしたように、利用者に責任を負わせるような法律は時代錯誤も甚だしいと思う。
こんな無理がまかり通るのは、CDなどの売上げが如何に絶望的かを表していている。たまたま音響技術のレベルがCDというプラスチック円盤を使うという時代であったために、プラ板の販売を維持するために時代に無理解な権利者を表に立てて、カネで法律家を動員して作った法律だろうが、一時的なものに過ぎないだろう。現実のネット・ITの世界のイタチごっこでは、高齢な権利者や法律家は勝てないからである。しかしコンテンツの権利が必要ないとか無秩序がよいといっているのではなく、プラ板販売という極端なバイアスから離れて、本当に権利者の立場に戻って考えるべきだと思う。音楽でいえばレコードを出していない人のことも考えるべきなのである。しかし個人の人権からみた諸権利の確立をすることはビジネスとは大きな断絶があるので、ここではこれ以上は触れない。
つまり音楽産業がCDの苦境をどのように乗り越えるかというのは、法律とは別にいろいろな試みがされていて、記事『リアルとネットが融合するライブメディア 』でふれたライブビューイングなどネット・ITの関係が多くなっているのだから、そういうビジネス拡大も含めたネット対策が進めば、海賊版対策も変わってくるだろう。記事『作品なのか? 商品なのか? 』のように既存組織の自己都合でいろいろなものを縛るよりは、YouTubeのように海賊行為をもプロモーションに変えていく工夫もできる。
そもそもコンテンツビジネスは大ヒットするマス対象のもの以外は、個々には儲からないものを組み合わせて、如何にして儲かるようにするか、というスキームがビジネスの根幹になる。商業主義の代表であるハリウッドにしても、記事『あの手この手のコンテンツビジネス』に書いたように、映画初上映から得るのは収益全体の28%に過ぎず、半年~1年後に始まるビデ オのセルやレンタルから始まり、航空機・ホテル、ビデオオンデマンド、テレビ放映など非常に細かい収入がいくつもあり、これら初上映からテレビ放映までの管理がされていることが鍵である。
だから現実に即したルールを冷静に考えるならば、ハリウッドのような閉じたシステムではなくても、オープンで似た構造ができるように、節々に管理機構をおいて連携させるようなクラウドの仕組みがあればいいわけだし、おそらくネットの巨人企業はそのような事業プランをもっているはずだ。
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10月17日(水)16:00-18:00 新しい出版マーケティングの時代