投稿日: Nov 15, 2012 7:40:12 AM
派生でビジネスが可能かと思う方へ
アスキー総研のメディア&コンテンツ・サーベイや、ニコニコの動画・静画のような若者の動向を追っているものからは、すでにデジタルコンテンツはお金が回っているところがあることがわかる。その一方で出版デジタル機構のように、どのようにしてお金の回り方を作り出すのか不明のところもある。出版社でもハーレクインのように新作も過去のものも全部デジタルでも行うところから、カンニバリズム不安が抜けずに売れないものをデジタル化している出版社もある。おそらくこういった落差は縮まらないで、電子出版で伸びるところと電子出版から撤退するところが出てくるのであろう。
大手出版社はソロバンさえちゃんと弾いていれば、自分で何もしなくても電子出版も派生デジタルコンテンツも、すべて外部の会社がやってくれるので、時流から外れることはないだろう。また零細出版社にとってはデジタルコンテンツやデジタルフォーマットでの出版の方が効率が良いので、必死で取り組むところしか生き残らないだろう。問題は中堅の出版社で、なまじっか過去の出版点数も多くあり、外部にデジタル化の作業を依頼するコストも負担できないことが多い。だから出版デジタル機構がお世話しますという考えがあったのであろうが、自炊と変わらないような単なる読むだけのeBookでは展望はなく、派生コンテンツの応用が出来やすいようにということでEPUBのような標準化に期待がされている。やはり出版社としてもデジタル化の前に今後の応用展開やそれに合ったマーケティングを考えるべき時期にきている。
専門書などで読者層が見えているような分野ではデジタル化の方法やビジネスのモデルができつつあるところが多い。極端な例は商業出版を諦めてボランティアのデジタル出版になる学術分野もある。ビジネスとしてはそういったデジタル論文をまとめて横断的に使えるようにするデータベースサービスで月間いくらという電子図書館的なものもある。いずれにせよ従来の紙の書籍・冊子の販売とは全く異なったモデルで生計を建てることにチャレンジしなければならないし、1社で出来ることには限りがあって、その分野関係したところが群として取り組むべき課題があり、過去から何らか組織的なつながりがあるところから進んでいる。
中堅出版社で専門情報を核としながらも、広く学生さん一般人にも売らなければいけないような多様な出版をしているところが孤軍奮闘で大変かもしれない。前述の専門書で特定読者の場合は、その世界(一種のソーシャル)の流儀に合わせていくサービスになるのだろうが、対象が広い場合には、ニーズに合わせてコンテンツを分解して組み立てなおすということが延々と行われることになるだろう。例えば歴史という同じ情報の範囲でも、中高生向けの学習用、ヤングアダルト向けのバカンス用、シニア向けの1泊旅行用など、求められる情報の組み立て方が変わるからである。こういったヒントはいろいろ考えられるようになりつつあるので、派生のビジネスを用意すべき時期である。
グルメや旅行コンテンツに関しては専門の編集プロダクションが担っていたようなことが、個別の出版者でしかも情報モノをうたわないところでもビジネスの機会が出てくるのがデジタルの時代で、書籍にしなくても教材や素材としての需要が生まれつつある。つまり以前は紙の本を先に作って、そのデータをデジタル目的に派生させていたのが、素材こそが全ビジネスの源になるように変わりつつあるからだ。地図屋さんだったらGoogleMapに提供しているように、コラムや事典なども他のデジタルメディアと連動して使う局面が増えているからである。近年ではWeblioが活性化していて、これはそのうち化けるのではないかと思って見ている。
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