投稿日: Aug 01, 2010 9:58:19 PM
アメリカのベンチャーには負けたくない方へ
昔から大学生の就活人気の企業ランキングというのが発表されるたびに、オヤオヤと思わされたが、それはデジタルとネットの時代になっても大きくは変わっていない。この人気ランキングは企業にとっては多くのお金を使って勝ち得たブランド力の証であはあろうが、ニュースでは業績や将来性がさんざんな企業でも残っていて、企業評価とは大きく隔たりがある。この紅白歌合戦のような顔ぶれは、中学生・高校生時代から刷り込まれた親の価値観も影響しているだろうが、大学生の多くは受動的で、それほどビジネスに関心を払っておらず、自分のこれからの生涯がかかっているところの長期的な社会変化も考えていないことの現れだろう。
アメリカのエリート校の職業観に関して書かれたもので、優秀な学生はベンチャー指向で、大企業へ就職するのはその2段階下という記事を読んだことがあるが、それは海外のコンファレンスのスピーカーの話を聞いていてもうなずける。大企業の責任者以外の人は大した話はできないが、小さなベンチャー企業はしっかりした社会観ももっている。ビジョンの話に加われるかどうかは、おそらく教養レベルの差のようだ。日本の産業別コンファレンスでは会社の看板を背負った人の話でも集客力があるが、アメリカの大企業の従業員はいつ首になるかわからない身分が多いだろうから、会社の看板だけの人の評価は高くはない。ビジネスにおける実際の金回りの経験に先立って、個人にビジョン力がないとベンチャーとして進めないのだろう。
しかし、やはりエリート中のエリートでなければベンチャーは成功しない、というわけではない。また最近のITやネットのトレンドに強いことが重要なわけでもない。最近のReadWriteWebに Digital Natives の若者のメディアリテラシー欠如の記事があった。大学生のサーベイをしたところ、2-3年前に比べてもWikipediaの利用者が10%強も減っているという。これはGoogle で上位に表示されるもので用が足れりとしてしまう傾向があるからで、検索結果に対して、誰がどういう目的で書いた記事であるのかという、出典に関する調査をする(気にかけている)学生は1割であるという。
要するに若者はネットはよく使うようにはなっているけれども、Media Savvy にはなっておらず(むしろずり下がっている)、メディアリテラシーの教育が必要であると言っている。おそらくこれは世界共通で、デジタルメディアに慣れ親しむにつれて、初期のように半信半疑で取り組むことはなく、デジタルメディアに出てくるものを鵜呑みにすることが多くなっていく。ここでは双方向性とかpullといった特性は次第に使われなくなって、マスメディアと同じようなものになっていくことを示している。
これがベンチャーとどう関係するかというと、ITやネットの揺籃期にこの世界にベンチャーとして飛び込んだ人は、メディアリテラシーの高かった人で、その人たちはエリート校から多く出た。メディアリテラシーの高さもエリート校の伝統であろうが、過去にはメディアリテラシーが直接ビジネスビジョンには結びつきにくかったのである。こういった分野にベンチャーの機会がでてきたのでFacebookも生まれた。今日いろんなソーシャルメディアが登場することの意味は、メディアリテラシーの高い人はますます高くなり、一方で受動的な人の比率が増えるという傾向である。
特に日本の若者が、先細りを心配するよりは、ビジョンを作れるようなメディアリテラシーの獲得に向かうことが期待される。