投稿日: May 21, 2010 5:3:24 AM
デジタルは出版にとって善か悪か迷う方へ
今の親は子供に対して『ゲームばかりしないで、ちょっとは本でも読め!』と怒ることがあるが、子供はマンガもそれほど読まなくなっている。ちょっと前には『マンガばかり読んでないで、外で遊んだらどうだ!』と怒られたもんだ。マンガがそれほど流通していなかった時代には、子供は日暮れまで外で遊んでいたものだった。今は外で遊ぶことができなくなった面もあり、また塾通いの隙間の娯楽としてゲーム機が広がっている。だからそもそも外で遊んでいた子供が、次第にメディアで遊ぶように変わってきたといえる。
マンガというのは出版産業拡大の余勢で広がった領域だと思う。日本の大出版社は最初からマンガをしようと思って経営していたのではないが、本業が先に踊り場にきてしまって、マンガが辞められなくなって、子供向けから青年、壮年まで手を広げたのであろう。今の紙の束が売れれば中身は何でもいいのか、と思われそうな経営姿勢では将来の出版ビジョンは生まれてこないだろうから、黒船に対して新しい出版業界を提示・構築することは難しい。
それでは出版の初心に帰って経営するとなると、発行点数や部数は相当落とさざるをえなくなる。今はよく自転車操業に例えられるように、企画は内容よりも点数・部数が先行することがある。そこで生じる本の供給過剰が、読者が内容を血肉化しきれずに「つんどく」になったり、家族の資産ではなく「消費」されて処分に困ることにもなるし、それがBookOffが出てくる根拠でもある。
電子書籍も出版コンテンツの消費という面だけではなく、出版のあり方を考える機会になるかなと思う。日本の都市生活者は年間で体重の3倍くらいの紙を消費している。再販制度は出版物の巨大な墓場を作り出している。書籍の返本の様子、その先の廃棄の実態などを見ていると、返本・墓場・リサイクルのためにずいぶんと投資や手間をかけていることを改めて感じる。それは何か建設的な役割を果たしているのだろうか?