投稿日: Mar 06, 2012 1:29:57 AM
SNSはどこか未熟と思う方へ
デバイスやネットワークという情報環境や、それらを使って情報サービスを行うメディアは、過去40年にわたって大きな発展をしたので、それによって産業の変化が多くあった。それはネットビジネスだけでなく、リアル世界のサービスであるコンビニも宅配便もチェーンストアも恩恵にあずかっている。ITに関しては、それによって単に情報を動かすよりも、その情報をビジネスに活用するところで発達してきた。逆に言うと紙メディアの代替物としての電子メディアのような、情報を動かすだけの領域はいつも後手なのである。そういう意味では情報発信だけのデジタルメディアサービスに未来はない。
知の…何々というお題目での機械知識のような技術は前に進まず、検索サービスの巨大化によって検索不可能なものは知ることができなくなって、結果的には知を支配することにもなる。近代以降に紙の出版が事実上知の領域を制約していたことを考えると、デジタル化で知の世界は広がるのだが、それでも手元で処理できるものはその時々のサービス能力に限定される。これが知のマキシマムなのだが、誰でもが知のマキシマムを感じることはなく、一般の人が頻繁に見る情報はネットにおいても、結局は紙の時代と大きくは変わらないだろう。紙の場合は有料であったものがネットでは無料になるという点でも、情報発信だけのデジタルメディアサービスに未来はない。
要するにデジタルメディアサービスは仕事に役立つとか学習に役立ってナンボというものに向かわざるを得ない。しかもそれはメディアとして独立してあるものではなく、人が何かをしようとした時にリスティング広告のように臨機応変に現れる形でサービスされるものになろう。先にメディアありきではなく、行動ありきで情報サービスを考えるべきである。その意味ではまだ今のSNSも単に情報を動かしているだけで、これが何か大きな変化をもたらすことにはならない。何をしていても、それに付随した情報や他との関係が即えられるようになっていればいいので、SNSは独立して見えなくなってもかまわない。今のSNSは操作を簡単にするあまり、家族の情報と、趣味の情報と、仕事の情報が混在してしまって、重要なことには使えないものとなってしまった。つまりITソリューションとしては重要なことに役立つ方向に行かないと生き残れないのではないか。
情報サービスとして広がりが考えられるのは、情報を意識しない一般の人が、自分で見ようと取りにいかなくても、ふさわしい情報を準備するような仕組みがビジネスの場に取り入れられていく分野だろう。それはpushでもpullでもSNSでもなく、重要度、緊急度、くつろぎモードなどなど、個人の行動原理に応じてふさわしい姿をとるものだろう。これはエンタープライズのシステムではすでにいろんな試みがあったが、面白みに欠けてモチベーションが上がり難かったり、介護や子供の世話のようなところがIT化が遅れていたり、ECと家計簿は連動していなかったり、いろいろな課題があって、それぞれが進化して融合できるようになるのではないかと思う。
IT化を進めるために人々にデジタルリテラシー向上を求めるのではなく、人々のリテラシー問題を解決して、より行動を円滑にするためにITを使うことになろう。