投稿日: Dec 20, 2012 2:40:22 AM
状況が動き出したと思う方へ
12月19日の研究会「EBOOK2012年の積残しと2013年の予測」 は大変活発な話し合いがされた。それはやはりAmazonのKindleが動き出したことが理由で、今まで定まらなかったeBookへの舵取りもはっきりしてきそうである。とはいっても皆が同じことを考えているとか、同じように進むというわけではなく、eBookの世界がいくつかに分かれていくということが話し合いの中から感じられた。それは逆に言えば今までの日本のeBookは文芸書のことしか対象にしていないかのような偏りがあったということだ。確かにミリオンセラーの作家さんがeBookを出せば市場がブレイクするだろうとは言えても、どうせ売れるなら紙の本で売ったほうがいいと出版社が考えている以上、eBookは前に進まない。
ところがAmazonはそういった日本の出版界の姿勢に風穴をあけて、出版社をバイパスして出版が可能にした。今のところeBookのランキングを見ても、紙の本であれば論外くらいの売り上げに思えるかもしれないが、著者ダイレクトで印税の比重が大きいと、著者からすれば「やっていける」スタイルになる。ただ問題はプロモーションで、それを助けてくれるエージェントが現われると新作も過去の作品もこのスタイルに流れて行くかもしれない。出版社に相手にされなくなった著者はたくさんいるのである。
つまり、eBookを考える上でのケースわけとして、①作家+出版社 ②著者ダイレクト があり、さらに実績の無い人も出版するロングテールの③自主出版がある。③は紙の出版ではビジネス化がうまくいかなかったものであるが、ケータイの有料コンテンツがいっぱい出てきたようなことが、Kindleの安価eBookで起こるのではないかという話があった。今のスマホのアプリになっているようなものも、eBook形式に編集して100-200円で売るようなもので、このクリエータは従来の出版とは異なる人たちであろうとみられる。現状ではガラケーのコンテンツがスマホにシフトし難い。もう一度仕切りなおしをするのに、スマホではゲームなどとの戦いになるので、いろんな分野の人がeBookに着目して参入することもあるだろう。
しかしeBookが出版社の経営を支えるものになるかどうかについてはまだ疑問符がある。そもそも紙の本が衰退しているのは崩壊のカウントダウンとみて、従来の出版ではないモデルが必要という意見がある。だからeBookといってもEPUB化すればなんとかなくものではなく、CookPadのように利用シーンに適したサービスを根本から考え直すべき分野が実用書などではいろいろありそうだという話があった。また根本から変わるものとて、スペースベースやクリックベースの広告ではなくアフィリエイトに傾斜していくだろうという見方もあった。ケース④は①②③を過渡期として、新世代パブリッシングに突入するというものといえるだろう。それはまだ2013年の話題にはならないかもしれない。