投稿日: Sep 03, 2014 1:26:22 AM
紙の出版を企画制作していた時には、原稿を書くとか依頼する前に、「だいたいこんな感じ」という資料を集めるのだが、過去に出版されていないものはセミナーやシンポジウムを開催するとか、取材などして何らかの1次資料を作った。それらの合計は完成品としての本のページ数の何十倍にもなることがある。だからパクる気があるなら、既存の資料からでも本は作れるほどだった。
企画というのは最初のプラン道理には進まないで、いろんな人と折衝を重ねる中で紆余曲折していくので、結果的には使わない資料も相当数出てしまう。ただし前職のような専門分野の場合は、また別の企画で使うことがあるので、ファイリングして置いておくと役に立った。つまり企画制作の効率化ができるのである。
編集プロダクションは仕事の範疇を特化させることで、他よりも多くの資料をもって、効率的な企画制作をするのと同じである。
私はこのファイリングにたいへん拘っていて、分類方法もいろいろ工夫したし、資料整理にパートさんを雇ったり、アメリカ映画などに出るようなハンギングフォルダの入るキャビネットをずらっと並べたり、壁面すべて移動棚にするなどをして、専門分野の資料を国内外から集めまわった。それは実際に業務をするのに役立ったし、どんどんインプットがされないと、新業務というアウトプットはできないのだという信念にもなった。
しかしこのようなことを組織として誰かに継承することは困難であった。日本ではオフィスのスペース効率というのが問題になるので、何年先に使うか使わないかわからないような資料の管理というのは真っ先にリストラの対象になる。
またネットの時代では企画の下調べはネットにある情報のみから行う風潮になって、古いキャビネットの紙資料を参照する人は居なくなる。しかしネットの中だけで情報を循環させることはマズく、最初にネットで企画コンセプトの大枠をつかむとしても、現実世界をうろつきまわることで企画の核というのが独自性を持って明瞭になってくる。ネットだけだと受け売りのコンセプトになりかねない。ネットの情報のクオリティが上がらないのは、PVばかり気にしていて、コンセプトが宙に浮きがちだからではないだろうか。
ネット上の情報サービスでも何かユニークなことをしたければ、現実世界に加えて図書館・資料室・古本屋などを徘徊することは必須だと思うのだが。
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