投稿日: Sep 05, 2011 10:5:42 PM
収入と遣り甲斐の板ばさみの方へ
スタートアップしようとする人は大きな夢を描いているのだろうが、実際にGoogleやfacebookになれる企業はない。ではどのような経営的成長を考えたらよいのだろうか?人に雇われるのでなければ、それ以上の収入が得られなければやる意味はない、と考える人もいるだろう。しかしボイジャーの電子出版20年近くの歩みのように、自分のやりたいやり方ですることを第一に考えて、収入は2の次という道を選ぶとか、選ばざるを得ないことの方が多いかもしれない。つまりまだ他の人のやっていないことをはじめる場合に、人に理解してもらえないことは多いからである。
多くの人に、とりわけ投資家に認めてもらうことと、自分が本当にやりたいことは、一致しないことの方が多いのではないか。それでもやりぬく人こそが世の中に楔を打ち込むことができるのであって、スタートアップを単なる世渡りとしか考えていない人は、長い目で見れば何も成果を残さずに消えていくのではないか。私がホリエモンはあまり評価できないのは、ヒロユキが何にこだわっているのかはっきりしているのに対して、一体何がしたいのか分からなかったからだ。世渡りで成功することがいけないわけではないが、社会なり環境を良い方に変えることができれば、金銭以上に達成感があるのではないかと思う。
さてボイジャーが電子出版を始めたことはCD-ROM電子出版が盛んで、著作権切れやコピーライト宣言がない過去のデータが一挙にCD-ROMで出版された時期があったが、そんなに売れなかった。Webの時代になっても過去データをサーバに集中されたアーカイブがいろいろなところで作られたが、アーカイブがそれほど話題になったことはなかった。しかしGoogleBooksも似たようなものではあるが、結構使われるようになった。これは何百万のコンテンツを集めた規模感と、検索エンジンで見つけやすいとか、使いやすさという面があるだろう。この先にさらに利用しやすい何かがあれば、商用化もありえるかもしれないが、個々のコンテンツが採算が合うようなものではないだろう。
アーカイブの世界は青空文庫のようにコンテンツはほぼ無料なのだろうが、その周辺に低額コンテンツの世界が築かれる。これは学会誌とかレポート類の電子書籍化が狙っているところで、これらも検索エンジンとか電子書籍端末の組み合わせで流通するので、少額決済の普及とともに広まる可能性がある。こういった分野はKindeなどの自主出版によっても弾みがついたものであるが、ほとんどは何千も売れるものではないから、従来の商業出版とは別と考えていいだろう。しかし過去には200くらいしか出なかったレポートが電子で500出るとか、増刷500部だったものが1000部を電子で売るようになれば、この世界では倍増なのである。
出版社でもワンポイントで100円のコンテンツを出しているところがあるが、従来の紙の束で商売する出版に匹敵するものとはならないので、出版社にとっては真剣になれないかもしれないが、世の中全体としてみるとコンテンツや金の流れを出版界に集中させずに、著者レベルで細切れの出版をして細切れに成果配分をしていく新たなルートの確立は画期的なものとなる。おそらく今スタートアップを目指す人は、こういった地味な仕事には興味を示さないであろう。しかしこういった方向こそWeb2.0以降の大きなトレンドである。