投稿日: Nov 20, 2015 1:40:17 AM
標準化の委員会をいくつか担当していた時に、偉い先生が委員長になるのだが、中には癖の強い人も居た。専門分野の権威であることは皆知っているので我慢をするのだが、もし民間の会社なら一緒に仕事するのは相当困難だろうなと思った。例えば、人の話は最初は全部アタマから否定してかかって、否定の文言を並べながら思考している先生が居た。否定はこの人がコトを検証するための思考方法であると思った。結論としては論理的に妥当なところに行きつくのだが、その間を付き合っているのが結構つらいのであり、同じ専門家同士なら主張を曲げずに張り合う気持ちで対処できるのだろうが、上下関係でがあるところでこういうモードなら人間関係は最悪になってしまう。
しかし議論とか真理の追究とかを真剣にする局面では、これくらいのことに耐えられないと前進は無いだろう。ところがジャーナリズムが情報発信をする際とか、個人のblogなどでは、炎上を乗り越えて議論し合うことは大変難しいので、論理性を徹底することを人はやりたがらない。
そして大体がどこからかの伝聞に毛をはやせたようなものを、さしさわりなく加工して流すので、こういうことが連鎖的に繰り返されると、伝言ゲーム的に内容は歪曲していき、風説になりがちである。情報理論で言えばエントロピーが増大する。これがネットの情報が増えても知的水準が上がらない理由だ。
そんな環境なのでネットで偽科学は横行している面もみられる。健康とか食に関するもの、現実世界と精神世界がごちゃ混ぜになったもの、核とか中性子とか目に見えないもの、あなたが知らない真実、そして近年はフリーエネルギーと称して永久機関に関するものが増えている気がする。それもチャンとした報道機関が採りあげたりするからビックリなのだ。
永久機関ではないにしても発電とかエネルギー源に関して似たようなアイディアが出てきている。実際に実験している本人は何らかの幻想をもっているのかもしれないが、こういう話題を採りあげるメディアの方は、事前に専門家の意見を聞いてから記事化すべきで、そうしないと前述のように伝言ゲームを始めてしまうことになる。
永久機関のアイディアは多様にあっても、なぜ無限に続かないのかの理解は簡単なはずだ。そしてもし自然界にフリーエネルギーがあったなら大変危険なはずで、エネルギーが出続ければ破滅になってしまう。核分裂というのがその例だろう。
一方もし地磁気を利用可能なエネルギーに転化する方法が見つかれば、それはフリーエネルギーではなく再生可能エネルギーだから期待はできると思う。まだそんな話は聞いたことが無いが……
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