投稿日: Jul 04, 2014 12:42:14 AM
恒例のブックフェアにあわせて電子出版EXPOが東京ビッグサイトで行われたが、出展は数十社しかなく、会場のところどころに休憩所がたくさん設置されていた。この機に合わせて新製品を用意したり、海外の提携先を呼んでプレゼンをしたり、いろいろ力を入れていた会社もあるのだが、全体がこうも盛り上がらないのでは熱心な出展者に申し訳ないことになるのではないか。
実際には電子書籍の売り上げはスマホの普及とともに伸びていて、実ビジネスとしてはポテンシャルは出てきつつあるものの、Amazonとか出版デジタル機構とか近年いろいろと話題になったところはほとんど出ていない。だいたいインプレスも出ていないのはどういうことかと思ってしまう。
これらの珍現象は、出展者側が考えていることと、このイベント主催者のコンセプトにずれが生じたからではないかと思う。電子出版の展示会は相当古いもので1980年代の後半には日経やカーナーズエキスポなどが行っていた。それらはブックフェアとは関係なく行われていたもので、その頃でも今回よりは規模が大きかった。ネットやデジタルの進展が追い風になるものに投資がされるのだから、追い風にならないようなやり方はやめてしまった方がよい。
リードが主催するのが18回目であるというが、今までどのような道を辿ったのかよく覚えていない。毎年いろいろな試みをしていたように思う。そのたどり着いたのが、出版のまわりのステークホルダとして、クリエーター、制作者、ライセンス、ITソリューションと、ツール類である電子出版というサブジャンルを並べたやりかたであった。
これは紙の出版の時にあった編集プロダクションとか印刷製本、取次などの分業体制を、デジタルとネットならこういうことになるだろうと想定して置き換えたものなのだろう。
しかしデジタルとネットのポテンシャルというのは、こういう分業をガラガラポンすることで、一気に高い効率をもたらすところにある。Amazonは自分で全部ができる。スタイルは異なるがニコニコと角川が一体になるのも従来のメディアビジネスよりも活性化させるためである。
今出版関係で働いている人たちは分業の仕組みの中で仕事をしているのは事実であるが、それをガラガラポンするコンセプトを打ち出さないと電子出版云々というイベントはできないだろう。分業化で起こっていることは「こんな単価じゃやってられない」ものであり、別の価値の源泉を見つけなければこの分業は消耗を続けて滅びるだけだからだ。