投稿日: Jan 07, 2011 11:6:26 PM
デジタルメディアは乱戦模様と思う方へ
年頭のCESのことがTVのニュースにも取り上げられている。スマートフォン、タブレット、スマートTVなど、昨年話題になったものが、今年はさらにいろいろなところから参入が増えて、もっと消費者・生活者の中に浸透しようとしている。CESのことはいまだに「家電見本市」と紹介されているが、少なくともデバイスの技術に関してはパソコンも通信も家電も分野として分けられないところに来ている。さらにそれらに関連しているコンテンツや旧来メディアのビジネスが影響を受けようとしている。CESのTVニュースを見ていて面白いと思ったのは、利用者へのインタビューの時に、オンデマンドでのTV視聴はコマーシャルをスキップできるとか、番組の時間割を気にしなくて済むということを紹介しつつ、アメリカの3大ネットワークの責任者へのインタビューからはスマートTVに対応がまだできていないことが伺えたことだ。
2010年にAmazonのKindleは800万台、iPadもそれを追うくらい、その他にもAndroidタブレットや、読書端末がいろいろあるのを足し合わせると、アメリカで2000万くらいのタブレット型デバイスが市場に出たと思われる。またNetflixのユーザは1900万になっているという。アメリカのインテリ層に限れば、タブレットもスマートTVもアーリーアダプタの時代を超えて、一挙に広がりそうなところに来ていると考えられる。しかしどちらもデバイスがあれば使えるようなものではなく、コンテンツが求められ、必然的に既存メディアとのコンフリクトは増えることになる。
音楽や動画だけでなく、人が触れるあらゆるコンテンツが、人にお供するタブレットや、居住空間に据えられたスマートTV経由で提供されることを前提に組みかえられようとしている。そこには従来紙の本として提供していたものが電子書籍になるのもその一部としてあって、紙の本を模すものやアーカイブが今は主流であるが、次の段階は普及する高解像度のタブレットに向けてマルチメディア化したものになるだろうことは以前から叫ばれてきた。しかしCESを見ると既存のTV放送の方が先に再編に動くかもしれないと思うようになった。
日本の書籍・雑誌も半減したが、アメリカでは新聞やTVも半減し、しかもネット上のビジネスの取り組みは非常にアクティブにしているものの、会社自体をデジタルメディアを土台としたメディアビジネスに生まれ変わることは出来ていない。その間に生活者の方はデジタルメディアへの取り組みがアーリー・マジョリティへのキャズムを超えつつある。要するに3大ネットもCATVもスマートTV対応ができていないのはもはや手遅れで、生活者の前面に立つことはできなくなって、コンテンツの配給業者化してしまうのであろう。日本でもCATVや衛星で3桁のチャンネルがそれぞれ日付と時間に区切った番組表を作っているが、それを頼りにリモコン操作で番組を探り当てるようにしてTVを見ている人は実在するのだろうかと思う。
では誰が生活者の前面に立つサービスをするのであろうか? AppleTVやGoogleTVがそういったところを狙って、広告モデルを作ろうとしていることは分かる。しかしインターネットのポータルサイトや検索サイトが、その時のコンピュータやメディアの企業が担うことができなかったように、スマートTVも既存のメディア企業でもIT企業でもないところに飛躍のチャンスをもたらすかもしれない。たとえばNetflixはそれを狙っているであろうし、ソーシャルメディアも狙っているかもしれない。2011年は今まで見ることができなかったバトルが繰り広げられるかもしれない。