投稿日: Feb 23, 2016 12:31:25 AM
かつては幾らECが広まってもアパレルは無理だろうといわれた。印刷のカタログでも繊維製品の素材感や色の再現は大変であったので、カラーマネジメントされていない画面で商品を十分確認できないだろうとか、色が異なるなどのクレームがいっぱい来るだろうとかいわれた。また靴のように実際に履いてみないと選べないものはECには向いていないとかいわれた。
こういった見解は日本における通信販売の歴史が浅かったので仕方がないが、アメリカのように通信販売の歴史が長く、何でも売っている国では、何らかの方法で上記のような問題はクリアされてきたのであり、それを日本人は知らないだけであった。
つまり通信販売における暗黙のルールが日本になかったわけだが、ダイレクトマーケティングに関する広告の規制や商業ルールが日本でも確立するに従って、通信販売で取り扱われる商品も増えたわけだし、また規制以上に暗黙のルールというのも売買双方に出てきた。
今ではオークションで個人も売り手になるので、この暗黙のルールは重要で、個人間売買の増加はルールの浸透を意味していると思える。
ものによっては業者から購入するよりも個人取引の方が親切な場合も多く、多くの写真が提供されているとか、レスポンスが早く送料も安い手段を提示してくれることがある。それで今までは売買されなかったようなものもネットオークションには出てくるのは魅力である。しかしそれでもやはり画面だけが頼りのネット通販では現物の確認をするには限界がある。その最大の弱点は、ツクリの良し悪し、仕上げの良し悪し、重量感(あるいは軽さ)、実寸などである。
ツクリはしっかりしているか壊れやすそうかなど、素材ではプラなのか金属なのか、仕上げは丁寧さについて、重量感は使い勝手に関係するだろうし、また寸法では外形以外にケーブルの長さとかオプションをつけるとどうなるか、など個々の商品ごとに要件は異なるだろうが、説明書きが試みられている。
前述のように紙のカタログ時代以上にネットメディアでは商品写真が多く使えるようになったことが良い点だが、動画も使われはじめ、使用の様子なども分かりつつある。また多くのECではメーカーとか仕入先にリンクを貼ることで詳細情報が得られるようにしている。amazonのカスタマレビューや価格.comのレビューを検索する人もいるように、評価サイトも購入の大きな手掛かりになる。このように情報が増えることで画面だけではわからないことも判断できる部分が増えてくる。
しかしマルチメディア技術は上記のような要求を真正面から取り組んでいるようにも思えない。ARのように、どちらかというと新技術は突拍子もないことをやって見せるファッションショー的なふるまいが多い。むしろECビジネスの充実に必要なのはCDのアーティスト名やタイトル名などのデータベース情報(CDDB)を提供しているGracenote, Inc.のような活動だろう。画面ではわからない情報をどれだけ集められるかというのがECの課題であるし、それが買い手の満足感にもつながるだろう。
最近は秋葉原のパーツやジャンク屋も半減してしまって、現物を確認しながら買い物ができなくなり、ちょっとしてものでもネットで購入せざるを得なくなっている。それは気に入ったものを買うということがやり難くなったことでもある。
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