投稿日: May 08, 2012 12:24:15 AM
テレビ業界はネット対応が甘いと思う方へ
テレビというメディアが滅んだりはしないが、従来のマスメディア型の発展はもうないであろうことは、デジタル化以前に明らかになっていた。それはアナログのCATVや衛星を使った多チャンネル時代が抱えていた矛盾で、選択肢を多くすると各チャンネルあたりの視聴者数は減ってしまい、視聴者数を増やすために再放送を繰り返していったことである。再放送は時差がある場合や生活時間の制約を緩くして時間シフトの視聴ができるわけだが、デジタルになれば基本的にはVODは可能になり、再放送は必要なくなる。つまりスポーツにおける頂上対決の中継のようなサイマル放送のニーズのあるもの以外は録画であれVODであれデジタル+ネットで解決してしまう。記事『マスメディアの残された選択肢』に書いたように、視聴率競争というマスメディア型のビジネスと違うものがテレビの今後の道になるはずだ。
しかしそんなことは昔から分かっていて地デジでもデータ放送とか双方向のインフラを用意していたのだが、それらの仕組みを使っていったい何が実現したのであろうか?視聴者参加クイズ番組止まりなのだろうか? 要するにいまさら仕組みの話は不要で、テレビの世界で実現できなくてもインターネットと連携で何でも処理できるので、そことリンクするモデルを考えればよいだけである。視聴者がクイズに参加するのに100もボタンのあるテレビリモコンを使わなくてもスマホでも可能なはずである。それはスマートテレビの時代だということなのだろうが、それを邪魔しているのが既存TV人のマス指向だと思う。
地デジでのアプリ開発が前に進まないのは、番組制作と視聴者の間にテレビ局と広告代理店が挟まっていて、なんとかマスマーケティング指向でやろうとしているからではないだろうか。番組制作と視聴者を直結させればWebやモバイルと同じような調子で細かいアプリが開発されるようになるだろう。つまりテレビにも自由に多種多様なアプリが組み込まれて使われる可能性はあると思う。今スマホだけでアプリを作っても利益の出ている会社の方が少ないだろうが、アプリの出口もクロスメディア的に広がっていくと、もうちょっと多くの開発者やコンテンツホルダの仕事につながっていくと思う。
要するに今までWebやケータイやモバイルのサービスを提供していた無数の方々にテレビコンテンツ参入の門戸を開いてくれれば、テレビはもっと活性化するだろうと思う。別の言い方をすると、情報サービスをする人はテレビと言うメディアもその他の特定のデバイスもこだわる必要はなく、誰がいつ何を欲するかだけに集中してこれからのサービスを考えることがクロスメディアの基本となる。いろんな技術知識や環境認識は必要ではあるが、アイディアから実現方法、ビジネスモデル、実運用管理能力、というところでデジタル+ネット時代にふさわしいスキルアップをしておけば、今後訪れるチャンスをモノにすることができるだろう。
アイディアは世の中にいっぱいあっても、「アイディア・実現方法・ビジネスモデル・運用管理」というのをごちゃ混ぜで議論してまとまらないのが素人で、情報サービスのプロはそれぞれ別の引き出しに入れて蓄え、管理して、必要な時点ですばやく組み合わせて実行できるという差があるのである。幸い今の広告代理店はマス広告指向だったので、デジタル+ネットに関しては欠けた点があるので、そこにWeb参入のチャンスがあったしこれからのメディアでも多くありそうだ。