投稿日: Sep 23, 2010 11:20:18 PM
なぜ過去の資産が活かせられないかと思う方へ
いまだに紙メディアを含む既存メディアの情報ビジネスはデジタルやネットに比べるとはるかに大きく、紙メディアに向けた記者・編集者・制作者は多く居て沢山の仕事をしている。こういった資産をうまく使ったら、ネット上での情報サービスができて、既存メディアの落ち込み分を補うとか、オマケでも儲けがでるのではないか? ということがこの10年来さんざんいわれてきた。しかし既存のメディアはそのようには動かなかったし、今後も動かないだろう。となると既存メディアのすべきことは経営上は縮小均衡しかなく、またそこからはみ出るような社内の才能に働き場を与えるための子会社ベンチャーに将来を託す、と考えるところが多い。
縮小均衡と言うのは目前の課題である単なるリストラや人減らしだけではなく、縮小してどこに終着するのかというビジョンが必要である。紙の本のビジネスをしている人の考えは、いくらeBookが普及すようとも印刷本を絶やすべきではないと思うだろうから、そう考える出版者も読者もそれぞれが自らの出費で紙の本の世界を維持できる仕組みを自律的に考えることがビジョンであろう。そのためにアナログのコミュニティとかアナログの流通をコツコツ築いていく努力をしているのかどうかが問題で、過去のギョーカイの仕事の枠組みに支えてもらおうと考えている以上は独自のビジョンはできないし、リストラ以上のことにはならず、「延命策は、座して死を待つだけ」になってしまう。
紙の本の終着すべきところとは、本来の会社の使命に戻っていくことかなと出版社を傍から見て思ったが、現在の大メディアはそれが曖昧になっていて、いかに間口を広げすぎた水ぶくれ経営になっていたかをあらためて考えさせられる。そんな中で自分の退職金の計算や老後の心配だけして、今の経営にしがみついている人にビジョンとかそれに向けてコツコツ努力することを期待することはできない。それは冒頭の既存の資産をうまく使って、ネット上での情報サービスをして、既存メディアの落ち込み分を補うことが出来なかったのと同じことだと思う。最近のWikipediaは新聞よりも速く情報更新をすることがあるが、そもそも新聞社が扱っている情報の広さや記者数・編者数、国内外のネットワークを考えると、Wikipediaくらいは社内の情報資産として構築してあっても不思議はないのに、そういう本来の使命に関することをやってこなかったことは明白だ。
紙媒体の将来性はともかく、現在のビジネスで考えても未だやるべきことをやっていないことが多くある。今フリーペーパーは一時のブームが過ぎ去って下り坂に見えるが、下り坂は下り坂なりに変化に対応したビジネスがあり得る。例えば近年のブームはサンケイリビングのような新聞型からR25のようなA4雑誌風への変化であったが、その経営が難しくなるならば、もう一度タブロイド新聞にもっていくこともあり得る。つまり縮小均衡にふさわしい最もコストのかからない媒体作りの努力で目下のビジネスを成り立たせるようなことに突き進むと残存者利益になる。事実印刷業で近年上場できた会社はそのようなところであって、かつての中堅印刷業界のリーダー達はむしりとられる側になった。
アナログでもデジタルでも小さなところからコツコツ仕事を積み重ねられる人が必要で、既存メディアには情報資産はあっても最大の弱点はWikipediaのように自分でコツコツすることがなくなったことであり、逆に資産はなくてもデジタルなら誰でもコツコツ積み重ねられる状況なので、コツコツタイプの人がよりデジタルに流れてしまうことだろう。 http://www.huffingtonpost.com/ はその典型で、すでにUSATodayのネット版を抜いている。しかしそれでも自己変革できない新聞社が多くあることが悲惨である。