投稿日: Oct 29, 2012 2:16:59 AM
グローバル化は韓国にも負けていると思う方へ
アメリカの大衆音楽の世界にのめりこんでいった人なら分かることは、音楽産業の世界は2つあって、それらは独立しながら相互に影響しあっていることである。その2つとはマスマーケット向けのヒットソングを生み出そうとする世界で、メジャーアーチストがひしめき合っている、いわゆる芸能の世界である。もうひとつはアイデンティティの共有をする音楽で、地域性が強いとか、人種とか、宗教とかで、いろんなカテゴリーがあって、それらが音楽の種別にもなっている。しかしそういう強くカテゴライズされた領域のアーチストでも、一個人としてはヒット曲も他のカテゴリーの音楽も楽しんでいて、ライブならばやっているし、カバーソングとしてレコードに吹き込むこともある。
この2つの世界の行き来は豊穣な音楽を生み出すためには重要で、ライブの盛り上がりにはヒットソングを交えることは必要になるし、ヒットソングの傾向や他カテゴリーを採り入れた自分のオリジナルも生み出される。またマスマーケット向けのプロデューサも地域的なヒットや宗教音楽歌手でポップな素材を探していて、そのネタを使って自分の抱えるアーチストに録音させたり、オリジナル曲をメジャーレーベルから再発売することがある。私がヒットチャートをよく観察していた1960年代半ばまでは、ヒットの半数くらいはそのような発掘であった。
しかしLPの時代になるとオリジナル曲数の少ないアーチストはレコードを出す機会が激減していって、メジャーな会社が大量生産体制を作らないと定期的なLPは出せなくなってしまった。これはCDでも同じで、今もオリジナル曲を大量生産をしなければならないメジャー音楽産業は自縛的になっていると思う。ところがライブの世界は音楽産業よりも枠組みがずっと緩いし、自由に楽しむ場でもあるので、即興で替え歌も行うように、知的財産権で縛りにくいものである。だから音楽ビジネスがメディア販売への依存を少なくしてライブを重視するようになるというのは、自然であるし、音楽そのものも楽しさが増す方向だろう。あくまでメディア販売は音楽活動にとっては二の次であって、メディア販売のために曲を作るというのは「会社都合」以外の何モノでもない。
音楽家にとってはライブだけではオーディエンス数が限られるので、どうしても音楽の配信が必要になる。今はライブの結果でよかったものをすぐにiTuneで売り出す人もいるようで、成果を積み上げていくという方法もとれるようになった。YouTubeなどで見てもらって、そこから音楽を買ってもらうというのは世界的に標準になりつつあると思うが、日本では間に入った会社の都合とか判断で、必ずしも誰でもできるものではないようだ。
日本でもライブから音楽販売、音楽販売からライブの双方の関係ができて、マスマーケット向けのヒット曲と拮抗するくらいになってもらいたい。しかしこういったものを紹介するサイトはものすごく弱体である。音楽産業の広告で成り立つ音楽ジャーナリズムに代わるものが求められているのだろう。