投稿日: Feb 26, 2016 12:8:33 AM
ゲームとか漫画とかポピュラーな娯楽になったもの以外、大方のデジタルメディアは考えたよりも儲からないを思われている。それがアナログメディアから脱却できない大きな理由になっている。一方でデジタルの技術革新は激しく、「この技術を使うとメディアが革新する」ということが何年おきに叫ばれる。確かに記事『広告と印刷の乖離』にあるようにインターネットの広告費は伸長していて、何かまたメディア革命の途上にあるようにみえる。当然今後もあたらしい情報伝達手段やコミュニケーション手段は出てくるだろうが、それが革命を起こすかどうかは疑問である。
20世紀に発達したメディアの歴史を振り返ると、それ以前からある新聞の普及とともに、週刊誌の登場、分野ごとの月刊誌の充実、会報・機関誌などコミュニティメディの普及、タウン誌・フリーペーパーなど少部数ローカルメディア、というような流れがあり、これは革命ではなく紙メディアの成熟化のようなものだ。
つまり体の中の血の流れでたとえれば、心臓から大動脈→動脈→毛細血管へと、太いパイプから細いパイプへと体中に血がゆきわたっていくように、重層的にメディアが積み重なることで情報が社会の隅々にまでゆきわたるようになっていった。
文字以外の情報も、レコード・ラジオ・テレビというのも、カセット、CATV、衛星、ネットなどメディアの多様化によって、やはりメディアは太いパイプから細いパイプへと発展し、それらが積み重なるという使われ方になっているのは、革命ではなく成熟化なのである。スマホによって、どこに居てもいつでも、マルチメディアコンテンツが得られるようになるのは、メディア成熟化の到達目標のように思える。
このように新しいメディアになるほど、毛細血管的というか社会の限られた部分で、断片化された情報が飛び交うもになっていく。だからコンテンツをマスオーディエンスにぶつけて、一挙に大きな金額を動かすような旧来のマスメディアビジネスはメディアの成熟化の中では通用しないのである。つまり毛細血管レベルではコンテンツコストは限りなく低いことが求められる。twitterやfacebook、line、youtubeという無料のコンテンツが量的に支配するようになって、それらを編集・再構成するような無料メディアがでてくるのであって、それらのオーディエンスがいくら増えてもメディアビジネスとしては大したものにはならない。
メディアビジネスが儲からないと嘆く人でも、こういったメディアの成熟化には抗しえないことを認識している人はまだ少なく、いまだ王政復古とか革命を夢想している傾向があるように思う。
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