投稿日: Jun 17, 2015 1:1:45 AM
これからのさらなるITの進展で多くの人の仕事が無くなってしまうという警告というか予測というか、論評が時々ある。過去を振り返ると確かに無くなった業務というのは沢山ある。それとともに人に求められるスキルが変わってきた。問題は変化の速度である。若い時に修行を積んだことが、壮年の働き盛りにはもう役に立たなくなっていては、社会全体としてはマイナスが大きくなってしまう。つまり変化についていくためのスピード感をどんどん上げていけばよいわけではなく、変化の先にどういう着地点があるのかを見通すことも重要である。
幸いというか、日本の技術革新の速度はやたらに早いものではなかったので、人生を狂わせるようなものはあまりなかったかと思うが、ビジネスの浮沈は数多く見てきた気がする。私にとっては手動写植、電算写植、DTPという変化が身近にあったのだが、一番設備が高額な電算写植が10年強しかもたなかったのが印象的だった。当時電算写植のコーディングを教えていたところにSGMLを勧めて、一緒に構造化文書の処理を教える事業をしたこともあった。
電算写植のコーディングはメーカーごとに異なる体系なので、それでデータを蓄積していっても、将来そのメーカーが無くなってしまうとデータの利用に差し障りが出てくる。実際のところアメリカでは電算写植の初期からメーカーの浮沈は激しくて利用者はこの問題に頭を悩ませていた。そこで書籍の発注者であるアメリカの出版協会(AAP)はメーカーに左右されないゼネラルマークアップを電子化された原稿に使おうとしてScribeに取り組み、結果的にはその発展形のSGMLを推すことになった。
SGMLはもう一つIBMのGMLのような文書データベースシステムを起源とする。これは当時CALSという特に軍関係の要請から急いで標準化が数多くされた。SGMLもマニュアルの電子化のために規格化を急がされた。湾岸戦争の頃で、砂漠で故障した戦車も衛星経由で電子マニュアルを参照して修理した、というようなことがまことしやかに書かれていた。
この流れはXMLの今日ではditaとして現役バリバリ活躍中である。
当然ながら無くなる仕事の先にも新たな課題は起こってくるので、人のやるべきことは減らないのだが、その変化についていける人は既存の職業教育では育てられないということである。それからするとAAPのSGML普及に向けた活動は革命的であったといる。
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