投稿日: Dec 01, 2010 11:33:4 PM
情報サービスで日本は強みがあると思う方へ
これから活動を始めるMEDIVERSEは、デジタルメディアに関する事業責任者のための「次世代メディアビジネスプログラム」と情報サイトを提供するが、それを通じて何が実現できるのかについて活発な話し合いがされることも大きな目的である。MEDIVERSEは10年後の社会を頭に描きながら、これから3-5年先に向けて自分のビジネスを構想してもらうためのプログラムであるので、これらの社会でどのようなポジションに自分が位置するかを考えることが重要だ。インターネットの歴史を振り返るとクリントン・ゴアの「インフォメーション・スーパーハイウェイ」は、今のアメリカのデジタルメディアのベンチャーがグローバルに活躍するようになった背景としてとても大きな要素であった。日本のINSはそれに先行するものであったが、FTTHという目標に象徴されるように、ドメスティックなところにフォーカスしていた点は弱かった。アメリカは光ファイバの先の生活やビジネスに思考が行っていたのである。
今の国や日本の大企業には、そういった10年後の社会を描いてみせる能力は無い。おそらく人材的には残っているのだろうが、多くの会社が情報関係の研究所を畳んでしまったので、社内外ともにデジタルメディアというテーマでの求心力を失っている。学会活動はあるがそれぞれ分野が限られて断片的な情報発信になりがちだ。ではアメリカではどうなっているのか? TEDのようなコンファレンスがその役を担っているといえるだろう。ここに登壇する顔ぶれを見ると、1993-4年頃にmosaicの登場で湧き上がっていたころから脈々と人がつながっていることがわかるし、一種の思想的なバックボーンを形成しているとも思える。冒頭の「何が実現できるのかについて活発な話し合い」というのは、たとえて言えばTED的なものであろう。
単に技術トレンドや経営革新のセミナーなら、ほっておいてもどこかで行われているので、それらを利用すればよい。しかし過去30年ほどのITの変遷を振り返っても、トレンドも革新も不断に続いていて、しかも時々リセットしてしまう。今ならPCアプリの一部がスマートフォンやタブレットに移るとか、サーバ利用からクラウドへ、といった大変革があって、従来のITのビジネスモデルは見直しになる。実際はこれらの動きにキャッチアップして日本ローカルな二番煎じ三番煎じのアプリを作るのが関の山かもしれない。それでは何年か先にまた企業としてのリセットに直面してしまい、経営の発展はない。いつまでもヒットエンドランである。
しかし日本ではこの30年ほどの間に、リクルートやベネッセやTUTAYA、SoftBankのように個人のライフスタイルに係わるメディア企業が興って、それ以前のマスメディア型ビジネスの領域の一部に取って代わることができた。しかも世界の何処にも例が無いオリジナルなサービスを多く産み出していて、グローバルな情報サービスにおいて日本の強みを発揮させる可能性はある。メディアビジネスは視線を遠いところに置けば、経営者としてもライフワークとしての取り組みができる分野なのである。今日の成功者である上記の企業もこれからのデジタルメディアの時代に向けていろいろなモデルの作り替えが必要になって、いろいろな取り組みがある。こういった民間の意欲をうまく結集すれば、日本でもTEDに負けないようなムーブメントを興すことは可能なのではないか? このようなことの必要性に賛同する方も募っていきたい。