投稿日: Oct 10, 2010 11:13:45 PM
若者はデジタル・ネットを支持し続けるかと思う方へ
若者は新聞をとらない傾向があるのは、新聞と言うメディアが「終わっている」証拠かどうか。中高年は若いときから新聞をとる習慣があったので今でも継続している人が多い。新聞が「終わっている」なら中高年ももっと新聞離れをするはずだ。そうすると逆に新聞が若者離れしてしまったと考える方が自然だ。こんな議論は30年ほど続いていて、新聞のデザインを思い切って変えることも各国で行われた。また新しいビジネスモデルとしてMetroのようなタブロイドの無料新聞も現れた。しかし未だに決め手はなく、若い層に食い込むことは出来ていない。デザインをいじってもメディアに接するきっかけは作れない。人がメディアに接するのは習性のようなもので、習性のきっかけは別のところにあると考えるべきだ。『ジャーナリズムとマスメディア』では戦争が新聞大部数化のきっかけであろうことを書いた。人生を左右するような出来事の中で接したメディアが、その後のその人の習性になると考えられる。
メディアのビジネスは「世代」と深く関係していて、世代間ギャップというのはメディアに関する習性の違いといってもいいほでである。人の意識はメンテナンスされないと崩れ去るもので、例えば阪神ファンというのも、ファンを盛り立てるメディアがあってこそ成り立っている。「阪神ファン」は一生続くのであろうが、「若者」は10年ほどしか続かないから、どんなメディアも若者をターゲットにするのは難しい。つまり一時若者を惹きつけても、次々新しい世代がでてくるのを捕らえ続けることはできないことが、新聞や雑誌が若者離れした理由であろう。
今デジタルメディアのビジネスをしている人は、自分は若者の味方と自認しているだろうが、これから10年経って異質の若者が現れた折には、どのように評価されるかわからない。BlogやSNSは若者が飛びつき、40歳代後半になると逆になじめない人もかなりいる。しかし高齢者もBlogやSNSを始める人が多く、40-60歳が落ち込んでいる感がある。mixiが盛り上がった頃に学生だった人は、卒業後バラバラになってもmixiでつながっていることがあるという。それに対して団塊のリタイア組も会社を離れてバラバラになる中で、ネット上で関係のリユニオンとか趣味の世界の仲間入りをするのにBlogやSNSが役立っている。2chも若者に支持されて始まり、利用者の年代が持ち上がるにつれて働き盛りの世代が飲み屋での言いたい放題をメディア化したようなものとなり、新人にとっては少し距離を置くようなメディアであると同時に、働き盛りのまじめな話も増えたと思う。
何らかの新しいメディアビジネスを立ち上げるに際して、若者が大きなマーケットになるのは、それ以上の年齢の人は情報接触の習性が出来上がってしまっていて、それを変えさせるのは容易ではないからだ。そのようなわけで、記事「メディアの革命はなかったし、今後もない」に書いたように、メディア利用の革命は起こらない。若者とは、まだ自分の人生が揺れ動いている人で、あらゆる習性がまだ定まっていないから、多様なものに手を出すが、結婚して家庭ができて、仕事も定まってくると、次第にライフサイクルも固定化される。若者はその上の層よりも情報感度が高い面があり、それで既存のメディアよりも新メディアに魅力があれば飛びつく。新メディアの側も高い情報感度が必要で、同世代の若者が担うのがふさわしく、高齢者が経営する会社は大抵失敗する。しかし新メディアは時代ともに入れ替わってしまう。雑誌がそうであったように若者の加齢とともに充実するメディアを作るという道もある。一度若者の味方になったからといって、ずっとそうであり続けることは難しい。デジタルメディアもそこまで考えるべき時にきていると思う。