投稿日: Mar 19, 2014 12:14:8 AM
イノベーション x イノベーション
たまに昔のパソコンを振り返るような記事があるが、どういうわけかパソコンのディスプレイについて語る人はあまりない。パソコンの仕組みからするとディスプレイはいろいろあって、何を選択してもらってもよく、パソコンの肝になるのはCPUとメモリで、それらがムーアの法則に従って急速に発展し、いろんな下剋上を起こしてきた、つまり社会に効用をあらわしてきたという見方が普通である。
ちょっと凝った調査をしている人は、HDDの進歩がどれほど凄かったかを語る。またコンピュータのインタフェースがシリアル・パラレルいろいろあったのが、パソコンがそれらをスマートでシンプルなものにしていったことを語るかもしれない。
しかし今はパソコンだけがコンピューティングではない。ユビキタス・コンピューティングとしてはスマホ・タブレットの位置が重要なものとなったし、テレビもデジタルでLAN接続によって生まれ変わるかもしれない時代である。テレビはすでにセットトップボックスや録画の分野はずっと前からデジタルのコンピュータになっているように、いろいろな機器がコンピュータを内蔵していることもユビキタスの要件である。だからスマホでいろんな機器にアクセスしたり、リモコンができるのだ。
これら全体の発展が社会的な効用をもたらすのではあるが、近年のもっとも大きい転換点はCPUやHDDではなくディスプレイであったはずだ。それも高精細カラー液晶という省電力の表示技術の発達である。
昔のパソコンの写真を見るとブラウン管式のディスプレイが机の上に載っていて、これはパソコン並みに電気を食う上に重たく、特にハイビジョンの20-30インチクラスのブラウン管を作ろうとすると200kgほどになり、奥行きも1メーターを越して、そこらの机の上には乗らない代物になってしまった。そこでNHKは躍起になってプラズマディスプレイなどのフラットパネルを開発していた。
液晶そのものは大阪万博のころから電卓などでおなじみであったが、カラー化するのは大変で、自然な画像・映像を表示するのに20年かかったといえる。CPUやメモリのムーアの法則とはほど遠い歩みの遅さである。また液晶のようなバックライト型のフラットディスプレイは光源の問題が大きかった。それが白色LEDによってものすごく安価になり、しかもバッテリーででも使えるものとなったがために、SonyのPSPもiPodTouchも、それらを起源としたスマホやタブレットが生まれたと言える。
コンピュータの側からするとカラー液晶や白色LEDのような別分野のイノベーションがあって、別の新たな世界が切り開かれたことになる。つまりイノベーションの掛け算が起こると大きなブレイクになるということだろう。カラー液晶も白色LEDも日本で生まれて改良され続けてきたものである。しかしモノ作りの専門家は、この爆発的な市場の活性化を予測できないのだから、モノ作りだけすればビジネスの躍進があるというわけにはいかないのだろう。