投稿日: Oct 11, 2011 1:3:38 AM
変化のタイミングをつかみかねている方へ
パイオニアの辛いところは、いくら素晴らしいコンセプトやアイディアを思いついても、時期尚早で事業に結びつきにくいことが多いことだ。一般にはAppleの Steve Jobs がMacとかiPod、iPhone、iPadを大発明したという報道があるが、ちょっと経緯を知っている人なら、Appleよりも先にそれらのモデルとなるものは出ていたことを知っている。つまり Steve Jobs は再発明したとか再定義したとも言われる。Appleは最初にAppleIIで成功して、その先の目標として当時XeroxのPaloAltoリサーチセンターで開発していたStarという机状のワークステーションを、卓上にしたLisaを開発した。大変評価は高かったが売れず、安いモデルとしてMacを出したが、これも売れなかった。Starは素晴らしかったが、それが大衆的に使われるようになるには、アプリケーションや周辺機器の開発者が圧倒的に不足で、時が満ちるのを待たざるをえなかった。
一方、iPod、iPhone、iPadについては先行するビジネスモデルが既によそにあって、それにプラスアルファするするようなところをAppleが行ったので、スタートから右肩上がりでビジネスが伸び、何年かすると世界的にブレイクすることで今日に至っている。つまり復帰後の Steve Jobs は商品を発表する「タイミング」や、市場に投入する「タイミング」を上手にデザインできるようになった。これらの発表時のプレゼンが素晴らしいと賞賛されて、 Jobs にプレゼン術を学べ、という説もあるが、Jobs のプレゼンが聴衆の心に大きく響くのは、プレゼン術だけがうまいからでなはく、みんなが「そうだ!」と思うようなタイミングで話しているからだ。
例えば携帯音楽プレーヤは最初はPeerToPeerで利用者同士が音楽ファイル交換していた時代にあっては、音楽出版社にとってはAppleの低額ダウンロード販売は海賊行為よりはましで、海賊行為が抑えられることも期待できるとなるとなると反対できない。iPhoneはアメリカが3Gに差し掛かるところに登場し、アメリカではこれから多機能ガラケーの時代になるはずのところを先制できた。ガラケーのように機能追加ごとに開発をやり直すのではなく、パソコンのようなプラットホーム化をモバイルに持ち込んだものだった。iPadもタッチ操作のOSがこれからいろいろ出てきそうなところに先制攻撃でき、Andoroidという強敵はいるものの、Windows7のタブレットは叩き潰した。
初期の Steve Jobs は自分のやりたいことを人に押し付けるようなビジネスで失敗したが、復帰後は自分のやりたいことではあっても、利用者が乗ってきそうな戦略を考えるように変わっていた。iPadの発表のときに、実はiPadはiPhoneよりも前から考えていたという話があった。つまりiPodをインターネットにつないで端末として使うことが先行的に開発されていた中で、アメリカの3G化に合わせてiPhoneを先行発売したと考えられる。
新事業に際しては近未来を読むことは必須であるが、競合や協力関係になりそうな技術やビジネスの動向を捉えて、ロードマップと同時にタイミングを見極めて、待つべき時には待って、ブレイクするときのための準備をすることが、運をつかむことになるのだろう。