投稿日: Jun 25, 2010 12:2:24 AM
旧来コンテンツベースのビジネスに限界を感じる方へ
先日角川歴彦角川ホールディングス会長の講演を津田大介さんが生tweetしていて、『クラウド時代と<クール革命>』という本が出ていることを知るとか、氏がやはり時代をよく見ているんだなあということもわかった。旧来マスメディア帝国の崩壊を予言することを書いたりしゃべるだけなら多くいるが、角川は事業実態を伴っているところが説得力になっている。帝国崩壊の予言者は別に間違っていないが、予言で食べていこうとすると、それは帝国に逆戻りになってしまう痛し痒しがある。佐々木俊尚さんの生き方はいろいろ言う人もいるが、独立系予言者としては新しい道を示している。twitterをみていると佐々木さんに噛み付く人がいるが、そんなことをすると佐々木さんに書くネタを提供することになってしまう。きっと『こいつどういうやつだろう』とネットで検索されて、そういった人のことを肥やしにまた佐々木さんは前に進む。おそらくネタが尽きることはないだろう。
佐々木さんの話はおいておいて、角川会長はある意味では映画に進出して角川書店の業態を変えてしまった兄と似た点があり、兄と違って芸術というよりはゲームやサブカルに近いところで角川の業態変革をしてきた人である。他の出版社との違いは自己変革ができる経営者一族という点にあるのかもしれない。先日の話の中でも雑誌「タイム」と映画会社「ワーナー・ブラザーズ」が一緒になったタイム・ワーナー(Time Warner Inc.)のことも触れていて、メディア事業のドメインの考え方が旧来の日本的ではない。やはりトップ自身がそのような意識になっていないと企業の変革はないのだろう。
確立した出版社はコンテンツありきのような言い方をするが、現場の最先端は新たな人探しが勝負どころで、この積み重ねでメディア企業は変革する。コンテンツありきしか言わなくなった出版社は徐々に風化していくだろう。本屋大賞2010年を獲った "天地明察"の作家冲方丁氏は1977年生まれで、SFのほかゲーム制作、漫画原作、アニメ制作などもしているという。こういう才能と向き合うには紙の出版だけをしているところは明らかに不向きである。だいたい1977年生まれであればこれらは横断的に通じている方が多数派であろう。要するに40歳以下くらいまでのマーケティングができない高齢化出版社と角川の差を改めて感じる。コンテンツなど用意しなくても若者は自分たちで文化を作っていくので、それをすくい上げるビジネスとしてメディア事業を位置づける道があるのだということになる。
特にデジタルメディアやネット環境という中では、Amazonが何でも売っているように既存コンテンツであっても流通のボーダーレス化にさらされている。それを吉とみるか凶と見るかでメディア事業の考え方は全く変わってしまう。天地明察のクリエータがメディア横断的であったように、生活者・消費者から見ても、例えばコミックとアニメとゲームは一括りのエンタテイメントと見なす方が自然なのではないか。メディア事業の業態変革はマーケットから考え直すべきだ。