投稿日: Oct 11, 2013 1:55:48 AM
教務のIT化が必須
大学関係のプロジェクトをしていることもあって耳にすることが多いのだが、このところ大学のあり方や意義についての議論がかまびすしくなってきた。これはあらゆる問題が一挙に吹き出しているように思う。非常勤講師残酷物語から、少子化にともなう大学の統廃合、職業につながる学科の増加、受験制度のみなおし、奨学金…。これらをひとつひとつ議論していても統合した新しい大学像ができあがるのかどうかは疑わしい。やはり、そもそも大学とは、というところから考え直さなければならないのではないのか。
電子教科書とか通信を使った遠隔授業とかITを大学に取り入れる話も進んでいて、ソニーも有名私立大に新しい電子ペーパーを使ってもらう準備をしているが、大学が本格的にITを取り入れるには、学内の通信環境やコンテンツのサーバー(クラウド)、教務の学生管理まで、土台となるインフラの整備が必要であるので、電子書籍端末操作のレベルの改善でITの効果がでてくるとは考え難い。
ハーバードなどアメリカのトップ校がネットに授業を公開し、日本でも有名大学で公開に踏み切ったところも出ていて、大学を社会にオープンにするという視点でITや通信利用を考えるのが1つの方向であるように思える。有名校は授業を公開することで、授業に合った学生を集めることができるというメリットがあって、結果的には良い学生が集まってくる。すでに予備校や塾では休んだ授業をネットで見られるようになっている。だから学校に行く理由は学友や先生に会えることになるし、学校の存在価値は学業を認証して卒業させることにあることに向かう。
その方策として単位取得があるわけだが、レポートでも実験・研究・調査などを記録しておくために、企業が社員の情報共有に使っているグループウェアとか日報のようなものが学校でも必要になるだろう。学生に与える単位はレポートや試験もあるが、日常の学生の活動が可視化されることが重要ではないか。レポートのコピペをITで判定するソフト開発よりも、日常の活動をログ化して追跡・集計するソフト開発の方が本質的なはずである。
つまり学習に関してはeLearningと、こういうゼミのような活動はグループウェアができれば、それに連動できるものとして電子教科書などネットを経由してオンデマンドで使えるものが便利になる。紙の本よりもデジタルが安い云々については、先輩から古本を譲ってもらえる仕組みを作れば相当解決するように思える。
学生の学業が可視化され安価に管理できれば、それによって単位取得の試験を受けたりレポートを見てもらうのは有料で、ネットでの大学の授業視聴はタダでもいいし、来ても来なくてもいいようにできるだろうし、そうなると定員というのがあいまいになって、入試というのも必要なくなる。単位を取得すれば進級するだけで、その段階で優秀な学生に絞り込んでいけば、自ずと卒業できる人のレベルは上がっていく。
ただし大学のオープン化によって入試はどうでもよくなると、現時点でもっとも稼いでいるところ受験関連収入に依存しているところが困ってしまうから改革は難しい。