投稿日: Aug 09, 2010 12:18:41 AM
時間稼ぎでは解決にならないと考える方へ
企業は従来のままのことをしていると崩壊するので、企業30年説とか変革の必要性がいつの時代にもいわれてきた。しかし今は30年も持たないと人々は思っているし、昔はもっと有効期間が長かったといえる。印刷はグーテンベルグの活版印刷が500年前、産業革命は200年前、電子化が60年前、デジタル化は30年前、ネット化が10年強前と、土台を揺るがす変化が加速化している。技術革新があると、利益の出るところが変わり、業界構造・業態が変化してしまう。このことは印刷の技術要素の様々なところに当てはまるだけでなく、どんな業界にも当てはまる。どうしても先に従来の業態を守るという発想になりがちだが、業態こそ変えなければ先に進まないものである。
問題は、変化の周期が加速すると、それに合わせて経営管理のテンポを上げられるかどうかで、これが難しい。近年日本の製造業のある部分が韓国や台湾中国にシフトした大きな要素が意思決定のテンポの違いで、本社で何度も会議をする日本と、トップが出かけていって即断即決をすることの差は大きかった。それまで日本の製造業の強みであった大企業の下に中小企業ネットワークがあるという構造は壊れてしまった。これは主に輸出産業から始まって、今国内のメディア産業にも影響を及ぼそうとしている。
出版・印刷やグラフィックアーツのコンテンツの世界は、ある意味最も経営が変化しにくい業態なのだろうが、その中にいる各社は近々大決断を迫られるだろう。課題はもう見えているから、中西印刷(株)専務・中西秀彦氏の『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』のような肯定否定のねじれた表現が生まれる。既存メディアに依存する広告やドキュメントの世界も、今こういったねじれの中にある。まだ紙媒体でさえ改善の余地はあるが、エコやCO2削減を掲げて紙の媒体を増やすことはできないのはこの典型である。こういった矛盾から抜け出して次世代のビジョンつくり、という大きいテーマに早急に取り組まなければならない。
国内では空洞化が進むのがIT・コンピュータ業界で、ハード販売はもとより、システム構築もダウンサイジングが激しく、BPOのようなサービス化とからめた業界になりつつある。出版・印刷よりも変わり身は早いものの、グローバリゼーションの中では押されてきているので、SIerは国内の事業会社の受託という位置からパートナーの位置に移らないと、国内で事業をしている意味は薄れる。どんな業種でもWebがありビジネスとメディアの結びつきは強くなるので、両者の関係の再構築をして経営革新とかビジネスを円滑にする課題がある。
最も変化に追従できそうなのが身の軽いベンチャーであるが、経営の経験不足とか経営基盤が弱く、アイディアはあっても上手に次の段階へ移行できないこともある。アメリカはベンチャーの強みを社会に活かす経験を重ねてきたが、日本は必ずしもそうではない。しかし競争も提携もアメリカ並みにできるようにならないと、グローバリゼーションの中では戦えない。
こういったそれぞれの業態が抱える問題を俯瞰してみると、変化の根は共通しているし、業態の組み換えというのも似た条件なので、過去の自分たちの業態に縛られずに業際的な提携をするいいチャンスが到来したのだろう。少なくともメディアビジネスに共通した課題を一緒に切磋琢磨する必要性は高まってきているといえる。産業別ではない人材育成の必要性を痛感する。