投稿日: Jan 05, 2011 10:22:31 PM
価値ある仕事を目指す方へ
SF映画では必ずTV電話が登場していたし、未来の生活の一コマとしてTV電話は大阪万博以来いつもイベントに登場していた。しかしそんなことはデジタルで当たり前にできる時代になったにも関わらず、TV電話は普及しない。きっと相手の顔を見れればいいなとは思うのだろうけれど、自分の顔が映るのは好まないのだろう。TV電話は技術的に可能になるからといって普及するとは限らない例である。だから技術革新のもたらす事柄を考えるには、次の4つほどのステップを踏むことを、記事『自分の未来図を描いてみる』で書いた。
1.情報サービスの分解 今のサービスの様式の奥にある本質をつかみ出す。(ステレオ装置→音楽配信)
2.トレンド 上記に関連した潮流は何か、それらの成長曲線を把握する。
3.駆動力 トレンドを動かす力として開発力や投資力、社会的要請をとらえる。
4.価値創造 それらをどう組み立てると変革が効率的に起こるか、何が生じるか、が未来図となる。
新しい情報サービスを思いついた時に自分の頭が、1~4のステップを行き来できるためには、事前にある程度の素養が必要である。これを集合でワークショップのような形でおこなうことを考えると、例えば次のような課題を掲げて、レポート作りや発表やディスカッションをすることが考えられる。
1.情報サービスの分解
メディアビジネスというと既存メディアの置き換えのように考えがちであるが、本来メディア自体が実体の代替物であり、今までメディアで行っていたこともデジタルとネットではリアルとバーチャルの行き来をするダイナミックなシステムになり得るし、それはデジタルメディアともスムースにつながるものとなる例が、ARをはじめ多く登場しつつある。一度今まで表層的にはメディアやコンテンツやサービスとして認知されている事柄も、本質が何なのかを捉えなおすことを、http://wiredvision.jp/blog/masui/ 第40回 そもそもの台頭 で提唱している。自分のやろうとしていること、それと関連のあることも今のビジネスや利用慣習から解き放って分解してみる訓練が必要であろう。
2.トレンド
IT関係では毎年新しいバズワードが登場するが、基礎研究から商品開発まではやはり10年20年かかるものなので、それくらいのタームで考えて必然的に今後の基礎となる潮流は何かを捉えておくと、バズワードに翻弄されることはなくなる。これは研究者でなくても今日ではARやユビキタスやソーシャル、クラウド、などなど理解しやすい状態になっているので、これらが自分のやろうとしていることにどう関係しているか、それぞれのトレンドが今ライフサイクルのどの辺にあって、今後のトレンドの変化はどうなるか、などを調査したり仮説を立てる訓練が必要である。
3.駆動力
バズワードは突然登場するように見えても技術革新は不断に続いていて、それを促進させたり抑制する要因が社会的に存在する。それは過去は戦争のような国の政策であったり、また経済政策であったり、企業の競争であったり、規制や規制緩和であったりする。こういったマクロトレンドを前提として、カタカナの羅列が多いコミュニケーション論や情報論や社会論を抽象的に捉えるのではなく、現実社会に即して見直して、カタカナの羅列ではなく自分の言葉でやろうとしていることの整合性を説明できると、追い風の戦略化ができる。
4.価値創造
自分のアイディアを1~3のようなロジックで揉んで組み立てて、その結果どのような価値を具体化できるのかをまとめて、プレゼンテーションすれば事業化に一歩近づく。単なる自分の好き嫌いや面白さを求めるのと事業化の違いは、この具現化を通して社会にどのような変革が起こり得るか、それを受けて事業も継続的に発展し、より大きな効果をもたらすという夢をもつかどうかであろう。ITやデジタルメディアがもたらすマクロな未来図を理解できて、自分自身のテーマに関してもマクロの未来図と連携の取れる未来図を描けるところまで、頭のトレーニングをしておくべきである。