投稿日: May 13, 2011 11:30:51 PM
有料コンテンツを考えている方へ
数年前に某社から頼まれてコンテンツ流通のための課題を検討する勉強会を行ったことがある。事情があって公表はできなかったのだが、ケータイ小説がブレイクする前で、コミックとアイドル写真などがネット流通の主流であったころで、オリジナルが紙媒体のコンテンツが派生的にデジタル化されることの課題を考えた。当時ISBNの拡張とかコンテンツIDとかJANの流通コードなどはあったが、それらはコンテンツ派生を管理するには向いていなかった。当時はケータイのキャリアごとにコンテンツを作り分けなければならない事情があって、ケータイ向けだけでも3つの派生があり、Webがあり、電子書籍があるということで、制作や流通側にとっては管理上の課題が浮上していたからである。
しかしこの勉強会には出版社や印刷会社は入っていなかった。それは出版印刷側がデジタルコンテンツをどうしたいという考えがあるわけではなく、ネットのビジネス側から有料コンテンツがほしいので動き出したものだったからである。出版印刷側を入れると、真っ先に権利問題とかが議論になって、こうあるべきだという主張のぶつかり合いになる。著者と出版と印刷の間にも編集や制作に関する隣接権のようなグレーな議論が次から次へと出てくるような時代だった。つまり生活者にコンテンツを届けるとか利用してもらうということとは次元の異なる話し合いになってしまうことを避けた。
ネットのビジネス側としては、再オーサリングの負担を軽減したい、つまりは共通に使えるコンテンツやメタデータを作りたい、利用者にわかりやすくしたいということがあった。例えばハリーポッターが小説から映画とアニメとコミックに派生したとして、これらにおける表現の差があることは生活者には説明不要であるが、ケータイとWebでは何が違うのかわかり難い。検索エンジンで見つけてもらって、同じものだと思われて買ってから苦情になっても困る。これらを何らかうまくカテゴライズして、IDのつけ方を見れば違いがはっきりするようにしたかった。またどこがどうそのIDを管理するかということも決める必要がある。
私自身は顧客視点でこれらのことを進めるべきだと思ったので、あえて作者・出版社・印刷会社の三つ巴とは別の席で原案を作るのがいいと考えた。なぜならネット上ではどうやって見つけてもらうのかがポイントで、書店サイトを用意するだけでは売れないことは、Amazon成功からしても自明になっていたからである。つまり検索エンジンにコンテンツが引っかかることと、blogなどのアフィリエイの優先順位が高い。そうすると例えば、物語の主人公をblogで取り上げた時に、商品のアフィリエイと情報を提供するだけでなく、ハイライトシーンや演者の写真も貼り付けて使えるものを提供するとか、便宜を考える必要があるし、それらの管理にもIDが必要である。
今日ではコンテンツホルダもデジタルコンテンツを活用したいという意向が高まってきていると思うので、作者から読者まで含めてのコンテンツIDの課題を改めて整理することができたらなあ、と思う。